水色

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「うん。新しいとこも、めっちゃええとこよ？みんな優しいし、雰囲気ええんよ。もう明日からハサミも握らせてもらえる」
「大丈夫。ちゃんと自炊しとるから。うん。今日はパスタ作ったで？」
「は？一人やし」

いつもと変わらない明るいオカンの声。
急に言い出した引っ越しやったのに、気持ちよく送り出してくれた。
心配かけへんように、せめて連絡はマメに。


「じゃ、明日も仕事やし、そろそろ風呂入るから。おやすみ」


オカンには、もちろん店を辞めた経緯なんて言えるわけなくて。
友達が店開くから、とかなんとか嘘ついた。
なのに、何も疑わんと笑顔で見送ってくれた。


…っ、

罪悪感なんか寂しさなんか。
熱くなる目頭を冷ましてくれる夜風が気持ちいい。そのままベランダで寄りかかってしばらく涙を流してた。

カタリ、

その時、お隣さんのベランダから、空の缶をそっと置く音が聞こてきて。

うわっ、声、おっきかったかも。なんか変なこと言うてなかったよな…？
うるさかったかな。
泣いてんの、バレた？


きっと仕事終わりの一杯でゆっくりしてたであろう隣人に、とりあえず心の中で頭を下げる、
今度、会えたら謝ろう。

これ以上、迷惑かけられへん。
音を立てないように、静かに部屋に戻った。

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