keep your doubt（JW赤×緑） (ページ1)

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今日はツイてない。

午前中。
上司に捕まって、くだらない世間話に付き合わされて、やる予定やった仕事が進まなかったし、
部下の資料のミスが見つかったものの、当の本人が休みやからと訂正任されたし、
取引先からいただいたお菓子、桜餡がよかったのに回ってきたのは小豆餡。

そんなこんなで、午後からの会議資料の印刷、まだできてへん。
一日くらい昼飯食べへんくても大丈夫。
その代わり、夜はコンビニの新作いちごスイーツ買って帰ろ。カスタードたっぷりのいちごタルトがいいな。
自分を鼓舞して、昼休み返上、パソコンに向かった。

「神山くん」

声のした方を見ると、マグカップを手にした同期の重岡くん。
給湯室から自分のデスクに戻る途中にある俺の席。

「ん？」

「…神山くんって、ゲイなん？」

目が合うや否や発せられた言葉に、思わず体を固くする。
重岡くんの表情から感情は読み取れない。

幸い、昼ご飯食べにみんな出て、部屋には二人きり。
よかった、誰にも聞かれてない。
胸を撫で下ろすと同時に、目の前のコイツに対する戸惑いと怒りがフツフツと湧いてきた。

答え方間違えると、仕事しづらくなるやろうし、最悪、ここにいられなくなる。

けど…
重岡くんは読めないヤツやけど、普段の様子から見て悪いヤツやない。はず。少なくとも、俺を貶めるためにこんなこと言うとは思えへん。

「だから？」

一か八か、答えた。

俺の答えを聞いて、明らかにドギマギしてる。
いや、ドギマギしたいのこっちやねんけど。
え…答え方、間違ったかも…

「何？揶揄っとんの？バラしたきゃバラせば？」

下手に出るのは怖いから、震える拳をグッと握って、せめてもの強がり。

「ちゃう！」

2人きりの部屋に、無駄に大きな声が響いた。

「お、俺もやから、」

だいぶ尻窄みにそう言って、重岡くんはへにゃりと笑った。