【逆先夏目】実験動物

No.29 崩壊 ページ34

自分でかいたロゴをはろうとして断念しました。難しい…。

ｰｰｰ

母からの電話など珍しい…。
否、異様だ。
基本放任主義のあの母が？

「ありえない。」

ボロリと本音が口から出た。
今日は色々と可笑しい。
でも出ない訳にもいかず、通話ボタンを押し、耳に当てる。

「もしもし、」
『あぁ、出た。一応聞くけど元気かしら？』
「用件はなに？」
『せっかちね。そんなんじゃ想い人に嫌われるわよ。』
「、だまれ。」
『親に向かってそれはないんじゃないかしら。本当に、いつ育てかたを間違えたのかしら…。』

ただでさえ余裕がない脳が沸騰する。
本当に、もう、親(あいつら)はいつも…。

『そんなことより』

神さまもだよ。
いつも私を見捨てる。

『用件だけど…

あなたもフランスに来なさい。』

ほら、やっぱり、そんなことだろうと思っていたのよ。
あの人達が娘を気遣うはずがない。
分かっていた。
分かっていた、のに…。
目の前がチカチカと明滅する。
吐き気がせりあがってくる。
悪寒が背筋を固める。

ね、私、は、幸せになっちゃ、いけナイノ？

「申し訳ないけ『ねぇ、瑚宵。これはお願いしてるんじゃないの。』

…

『親として、命令してるの。こっちの事業が成功しそうなのよ。新しいパトロンが沢山支援してくれてるの。だから、こっちに来なさい。その家も売り払う。飛行機のチケットを送ったから、1週間後の便。待ってるわね。』

一方的に全部話されて、一方的に切られた電話。
しばらく呆然としてたけれど、全てを自覚して、理解して。
その瞬間、目の前が滲み始めた。

なんか、馬鹿らし…。

スマホは力が抜けた手からするりと落ちる。
その音を耳の端で捉えながらベットに横になった。

もう、全部、全部、どうでもいい。

夏目は正しかったんだよ。全部。




目から涙が際限なく流れた。

「あ、あぁ、あ…」

馬鹿みたいに、嗚咽がもれる。
馬鹿みたいに、ありえないものに縋る。
夏目…夏目、助け…。

今日ほど、この家が防音構造になっていたことを感謝する日はないだろう。




「いや、いやぁ、いや、いやぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ！」




それは、高校2年生の時、




.





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私の心はひとつの欠片も残さずに、崩壊し、




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壊れた。

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