【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ6)

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その時だった。

ある程度の低さのある、柔らかな心地よい声がして一同はその音がする方を向く。そこにいたのは間違いなくケイトが見つけようと思っていた人物で、エースやデュースにとっては初めて生で見る天才音楽家の姿そのものだ。

「チェーノくん！久しぶり〜」

「え、チェーノって…あのチェーノ･ラルフィア！？」

「す、すごい…本物だ…！本当にNRCにいたのか！！」

「なんだ、コイツすげぇヤツなのか？」

それぞれが異なる反応をする中、呼ばれた本人であるチェーノはいつものようにふわりと笑っていた。午前中に殆ど学園に姿を現さないことから、新1年生にこのように都市伝説扱いされるのはもはや毎年の恒例行事である。

『ふふ、こんにちは。にぎやかで楽しそうだね』

「チェーノ先輩。すみません、お邪魔している上に騒がしくしてしまい…」

『何も気にしなくていいんだよ。リドルくんは礼儀正しくて、いつもえらいね』

そう言って頭を撫でるチェーノ。段々と心に余裕が生まれてきたリドルは、それを素直に受け入れた。

この男は会う度に彼の行いに対して何かを褒めてこうすることがある。何も知らないクセにと煩わしく感じる時もあったが、オーバーブロットを経た今、こそばゆくこそ思えど振り払う理由が無かった(有り得ないモノを見た、と言わんばかりにエースとデュースが目を見開かせていたのは実に解せないが)。

もとよりチェーノとは学年主席という肩書きを持つ者同士で、教師からも優等生と呼ばれる共通点を持つことから自ら勉学についての話を聞きに行くこともあった。以前よりリドルなりに慕っていた数少ない先輩の1人である。

安易に事情を聞き出そうとしていないだけで、今回のハーツラビュルでの出来事も恐らく把握しているのだろう。仮に知らなかったとしても、リドルの纏う雰囲気の穏やかさから何かしらの変化を感じ取っているはずだ。

…心配、させてしまったのかもしれない。暫くは寮内の行事が忙しくて、顔を合わせてさえもいなかったから。

そう考えると今こうして会っていることが妙にむず痒く思えた。何だか居た堪れない気持ちにもなってきて、リドルは自分からさっさと注目を逸らそうとひとつ咳払いを零した。

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