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夜の音楽室に、明るい音が響く。
「チェーノくーん、こんばんはー！」
チェーノを呼び出した声の主は、無人の空間で大きく叫んだ。誰もいない壁際に向かって話す様は、傍から見れば異常なのかもしれない。しかし、彼にとっては何気ない日常の一つだった。
その声に呼応するかのように、何も無かったはずの壁際から白い光が放たれる。
凡そ人1人分が通るドア程の大きさまでに広がったそれは数秒もしない内に何事も無かったかのように忽然と消えて、直後、何処からともなく音楽家は現れた。
「やっぱりここにいた」
『こんばんは、よく来てくれたね』
「”子どもたち"は良かったの？」
『うん、もうおやすみしたよ』
チェーノの話し相手は急に姿を見せたことに全く驚かず、その上子どもたちとやらのことを詳しく知っているようだ。彼の方も話が通じることを前提にしている辺り、2人はかなり親しい関係性にあるらしい。
『今日はどうしたの？ぼくにお話しかな』
チェーノ以外の者が夜の音楽室に来ることは滅多にない。学生は就寝が推奨されている時間帯ということもあり、余程の用事がない限り普通ならば行こうとさえ思わないだろう。
「聞いたよ、オーバーブロットした所に居合わせたって。ユニーク魔法も使ったんでしょう？」
『そうだね。けれど、みんなのおかげで何とかなったよ』
控えめに笑うチェーノとは対照的に、不安そうな顔を向ける。目の前の彼が今にも壊れてしまいそうだと思った。何とかして寄り添いたくて、本心を話してほしくて話を続けた。
「…怖かった？」
『ふふ、心配してくれてありがとう。ぼくは大丈夫』
こわくも、かなしくも、
どんな感情も悟らせてくれないチェーノに、やっぱり自分だけではどうしようもできないのだという無力感が襲った。
チェーノが言葉にしなくとも、胸元に備えてあるマジカルペンの黒ずみがその精神状態を写し出していた。普段の彼ならば、ここまで酷く染まることがないようコントロールできるだろうに。
でも、決してそれを言及はできない。その先に何を言われるか、何て声を掛ければいいか、きっと
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「…でも、今日はもう終わろう。ゆっくり寝た方がいいよ、チェーノ
『分かった。
だから僕は、こんな気休めの言葉しか君に伝えることができない。
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作者名：YAS | 作成日時：2022年9月30日 17時
