〃 ページ40
･
王宮の使用人に連絡を取って探りを入れたりもしたが、各国の主要人物を把握しているであろう古参の執事や料理人でさえ「何も分からない」の一点張りである。現役で音楽家として活躍していたらしい彼の両親や、故郷に関することを起点に調べてみても結果は同じだった。
天才音楽家と謳われ、他国の式典に出席できる程の権力がある両親を持つ幼子＿そんな少年を知る者が誰一人いないなど、端的に言って異常である。
"君と友だちになれるように僕がいっぱい頑張るよ！”
その存在が最初から無かったようだと思った。幼かったレオナが都合よく見ていた夢なのではないかと空笑いをする。そんな自分自身を否定するかのように、爪が食い込む程手を握り締めた。
"だから、また会ったら話の続きをしよう”
自分たちはあの時間違いなく、次の約束を取り付けたから。彼の言葉と表情には確かに温度があったのだから。ただの夢だったわけがない。
それなのに彼に関する事柄だけが
(綺麗に？隠される？)
少年は隠されている。世界にその存在が知れ渡らないように、意図的に。レオナはそこで初めて違う可能性に気付いた。
これを踏まえて、今度はチェーノ･ラルフィアについて焦点を当てる。すると案の定、過去の経歴や家族構成などの情報が一切出てこなかった。
それは少年のことを調べた時に感じた徹底ぶりに似ていた。否、似ているどころの話ではない。
違う界隈ではあるが、彼と同じように若くして世界で活躍しているヴィルやRSAのネージュと比較しても、その差は歴然たるものである。
しかも驚くことに、その事を指摘する第三者の声さえ見受けられないというのだから、もはや称賛に値する。チェーノは最低限とは言えメディアに登場することもあるのだから、ファンを中心に違和感を覚える者など多数いるだろうに。
可能性が確信に変わった瞬間だった。
つまるところ、少年及びチェーノ･ラルフィアに関する情報は、
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 117人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：YAS | 作成日時：2022年9月30日 17時
