【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ38)

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黒の化身を見に纏い、彼方此方へ魔法を放ちまくるオーバーブロット状態のアズールを、けれども一同は何とか無力化することに成功した。彼と同じ寮生にして幼馴染であるジェイドとフロイドは勿論のこと、2度にわたりこのような場面に立ち会っていた監督生や、サバナクロー3人の協力の末の結果である。

静かに倒れ伏したアズールに駆け寄れば、ながい眠りから目覚めたようにゆっくりと意識を取り戻した。ジェイドが手の指の本数を問えば「8本」と動揺しながらも答えた所を見るに、まだ精神的な回復は十分ではないらしい。

自分が闇堕ちしていたことも覚えていなかったようで、彼の記憶がようやく鮮明になってから、写真を博物館から取ってくるように依頼したことの真意をぽつぽつと明かした。

話の流れでアズールの過去の容姿をフロイドに盛大にバラされ、また一部(デュース)からは謎に共感されたりもしながら、談笑に程近い穏やかな会話が続いた。

「……」

一件落着といったムードが流れる中、レオナはアズールを囲む集まりとは逆の方向を睨むようにして見つめる。其処はつい先程までチェーノがいた場所に他ならなかった。

彼は一同で必死にオーバーブロットを諌めたや否や、アズールの生死を確認するよりも前にこの場を即座に離れていた。ジェイドとフロイドに『あとはよろしくね』と言い残し、倒れていた寮生数名を魔法で運びながら。

恐らくは被害を受けた彼等を保健室まで送り届けるつもりなのだろう。彼らしい行動と言ってしまえばそれまで(実際にチェーノを咎める者は誰一人いなかった)なのだが、レオナからすれば違和感しかなかった。

何故ならばあの日、同じくオーバーブロットした自分の安否を、震えるように確かめたあの日の彼とは打って変わった言動だったからだ。

"生きてて、よかった”

珍しく感情的だったチェーノの安堵の声と表情の柔らかさを思い出す。

案外ピンピンしていたレオナに心から安心しているようだったし、到底嘘を吐いているようにも見えなかった。そもそも多忙を極める夜にわざわざ駆けつけ、お世辞を述べてまで媚びる必要など彼には全くない。

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