【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ37)

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禍々しい気配と誰かの悲鳴さえをも含んだ騒然たる有り様は、思わず目を背けたくなる程のものだった。

いきなりモストロ･ラウンジへ辿り着いたことにはじめは只管困惑する一同であったが、あのアズールが暴れているという事実とその荒れ具合を直ぐさま目の当たりにすることとなり、チェーノが自分たちをここまでしてでも(････････)呼び出したかった意味を思い知らされる。

『急に連れてきてしまって、ごめんね』

後発でモストロ･ラウンジにやって来た双子や監督生たちは、丁度レオナ･ラギーと合流したところで、チェーノの声が聞こえたのは此処とは少し離れた場所からだった。

彼等のいない間にレオナやラギーがどんな行動をとっていたのかについて、到着して間もない頃に本人たちから説明を受けていた。しかし今思えば、チェーノはその輪の中にはいなかった気がする。

周りの様子は反応からして、どうやらチェーノは魔力を吸い取られ倒れてしまった寮生のために安全な場所を確保し、そっと休ませていたようだ。その人数や手際の良さを鑑みるに、今までずっと彼等の応急処置をしていたに違いない。

『ぼくの魔法のことは後でお話しするから。だから、どうか、』

「あなたたちの力も僕にください。ねえ、僕にくださいよぉ！」

祈るようなチェーノの言葉を、一際大きいアズールの慟哭が容赦なく遮った。もはや幼馴染のジェイドやフロイド相手にも見境なく魔法を求めている。ブロットは既に許容量を超え、魔法石が完全に黒ずむ直前にまで迫っていた。

そんな状態にとどめを刺したのは、「昔よりもダサい」と面と向かって言ってのけたフロイドだ。

"昔”というフレーズを皮切りに、何処か不貞腐れたように投げやりで自虐を始めるアズール。次第に語気が強くなっていき、遂には声高々に他者の力を奪い尽くすのだと宣言した。

ポタリ、ポタリと黒いインクが滴る。その波紋は次第に勢いを広げ、やがて大きな染みになって溢れかえり＿

目線の先には凄まじい瘴気を帯びる蛸の人魚と、海の魔女にも似た恐ろしい怪物が佇んでいた。

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『……』

無意識に震え上がった手を抑え込むようにしてもう片方の腕で握りしめる。

この場にいる誰もがアズールのオーバーブロットに気を取られ、過剰に取り乱していた者がいたことには一切気が付かなかった。

それは彼にとって、幸いと言えるものだったのだろうか。それとも＿

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