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唐突なタイミングだった。
あまりにも繊細且つ心地の良い音色、深海によくマッチした神秘的で不思議な旋律に魅入られ互いの臨戦態勢が一旦解かれる。
「でも、一体誰が？」と必死に耳を傾けるも、何によって其れがもたらされているのかは皆目見当もつかず、とは言えこのまま見過ごすこともできなかった。
なぜならば、何処を探し回っても
「…ジェイド。コレってもしかして、ネムリブカくんの」
「ええ、間違いなく彼のユニーク魔法です」
そんな中でも、チェーノと比較的関わりの深い双子は確信する。この不可思議な現象を起こしているのが、学園内という此処から離れた距離にいるはずの彼だということを。
「チェーノ先輩のユニーク魔法！？」
「どうやら僕たちのことを呼んでいるようです。あちらで余程の何かが起きているのでしょう」
改めて冷静に状況を分析するジェイドと、「やっぱヤバいことあったんじゃん」と警戒を強めたフロイドは、チェーノの使った魔法が何たるかを心得ているようだった。
そして、未だに何が起こっているのか理解しきれていない1年生達をそのままに、「詳しくは後で説明する、今は音に身を任せているだけでいい」という曖昧すぎるアドバイスを残し、我先にと鰭を器用に動かしながらそそくさと去って行った。
「えぇ〜全ッ然意味分かんないだけど。結局逃げられたってこと？」
「卑怯なんだゾ！」
「まぁまぁ…とりあえず言われた通りやってみない？」
じゃないと2人に追いつけもしないよという監督生の指摘に、残された面々は渋々ながら従うことにした。
と言っても自分たちができることは唯一つ。何処から流れているかも分からない音楽を聞き続ける、たったそれだけなのだ。
現状に腑に落ちないまま、何も納得できないまま、あのチェーノが音源の主だという贅沢な演奏をBGMに海を彷徨う。ただチェーノもアズールの協力者で、どさくさに紛れ難を逃れるように手を貸していただけのことなんじゃないかという懸念さえあった。
しかし、そんな不満ばかりで溢れていた彼等の表情は忽ち驚愕の一色に染まることになる。
「…は？」
何せ自分たちも知らずのうちに海を出ていて、気づいた時には既にモストロ･ラウンジという地に足を付けていたのだから。
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作者名：YAS | 作成日時：2022年9月30日 17時
