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「あの2人って…ジェイドくんとフロイドくんのことッスか？」
『うん。(アズールくん:あの子)には、ふたりがいないと』
ラギーはその答えに対して疑心のままに顔を顰めた。
単にその真意を理解出来なかったのもあるが、手筈通りならば彼等は海の中で監督生達と対峙している最中で、この陸にすらいないという問題が真っ先に浮かんだのだ。仮に呼び出せたとしても此方へ到着するにはそれなりの時間を要すると、理解できないチェーノではないだろうに。
「双子くんたちが戻ってきた所で、今の状態を宥められるんスか？帰るのをただ待ってるワケにいかないし、それよりも先にアズールくんがどうなるかも分かんないし…色々と現実的じゃないでしょ」
こんなやり取りの間にも、アズールは己の精神や魔力を摩耗しながら寮生たちへの攻撃を続けている。
オーバーブロットさえ危ぶまれる状況というに、下手に話しかければ彼を触発してより事態を深刻化させかねないのだからもどかしい。そういった意味では、確かに親しい間柄のジェイドとフロイドからの説得は効果があるのかもしれないが…いや、だとしてもその望みは薄すぎる。
そんな冷静であろうとする思考と希望的観測を繰り返し、そして打開策がなかなか見出せず行き詰まりになる。
幾ら他人事とは言え、ここまで関わってしまった以上は流石のラギーでも今から逃げるワケにいかなかった(勿論、後に文句を言われ責任を取らされるのを少しでも避けたいという考えもあったが)。でももう、手遅れなのかもしれないと思わず口にしようとした寸前＿
『だいじょうぶ、ぼくにまかせて』
そう静かに言い放つ姿は凄まじい喧騒の中にあっても尚際立つもので、倒れ行く寮生たちや不安と焦燥に駆られる現場にそぐわぬ安心感のある声色だった。
そこにはもう何の惑いも憂いもない、普段と何ら変わりない調子のチェーノがいた。困っている者に救いを与え、世界中に演奏を響かせる音楽家チェーノ･ラルフィアの顔だ。
『ぼくたちの言葉は、どうしたって届かないだろうから。だから、ふたりの力が必要だと思うんだ』
『ぼくの魔法があればだいじょうぶ。きっと、
周りはイマイチ状況を飲み込めぬまま、けれでもチェーノが言うなら何とかなるのかもしれないと密かに期待を膨らませる。無言の視線に見守られながら、彼はそっと自身のマジカルペンを手に取った。
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作者名：YAS | 作成日時：2022年9月30日 17時
