【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ4)

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いくら成績優秀であったとしても、言ってしまえば特別待遇とも呼べるチェーノのそれを、良く思わない生徒に非難されることは多々あった。

"天才”であることが気に入らないのだと他人から嫉妬されようと、謂れのない暴言を吐かれようと、それでも彼が一切言い返したり否定したりせずに全て受け止めている所もヴィルは見てきた。

ろくに努力もせず文句だけ一丁前な奴らの言葉をいちいち真に受けていては仕方ないと言えばそこまでなのだが、とはいえ少しも傷つかないという訳でもなかろうに。

滅多に反撃しない性格を周囲に認識されているチェーノのような人間ならば尚更だろうと、最初の方はそう思っていたのだが、いくら時が経っても彼が態度を変えて怒ったり、感情的に反発したりするようなことは一切なかった。この3年間、一切だ。

今は表立って昔ほど悪く言われることはなくなったものの、『そうだね、いい気分にはならないよね』と見ず知らずの生徒に説得する場面に未だに遭遇することもあった(チェーノでない人間であれば却って相手を煽っているように見えなくもない)。

そもそもヴィルは彼の笑う以外の表情を見たことがなかった。あくまで事務的に同じ対応を繰り返す様に、精神的な弱さなど微塵も窺えないのだ。正直に言ってしまえば異常以外の何物でもない。

「まったく…程々にしておきなさいよ。後で盛大に体調を壊しでもしたら、思いっきり鼻で笑ってあげるから」

反対にチェーノは、ヴィルが何かと自分を気にかけてくれていることを知っている。普段の物言いや言葉だけでは冷たく感じられるかもしれないが、そこに心配の感情が確かに入り混じっていることも。

業界こそ違うものの、仕事そのものに対する姿勢へのある種の尊敬の念や、時々ほんの少しの羨望を抱いていることも(後者に関しては、もちろん本人が悟らせるつもりはなく、チェーノが感じ取ってしまっていることの方が異常なのだろうが)。

『ふふ、気をつけるよ。ありがとう、やさしいヴィルくん』

相手の全てを知り尽くしているわけではないが、会話にしていない部分の空白を読み取れない程距離感があるわけでもない。NRCにおいては断トツで良心に溢れていて、本来ならばあまり相性の良くない部類であるはずのチェーノと過ごすひと時を、ヴィルは存外悪くないと感じていたりするのだった。

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