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オクタヴィネル寮の談話室まで戻ってきたチェーノに声を掛ける者たちがいた。
「あ、ネムリブカくんやっと来た〜 今日もオシゴト？真面目だねぇ」
「チェーノさん。夜分遅くまで大変お疲れ様です」
『ジェイドくん、フロイドくん。ふたりもお疲れさま』
真夜中というのに未だ寮服を袖に通したままの彼等もまた、オシゴトとやらの最中なのだろうか。フロイドの口振りからして、どうやらチェーノの帰りに必ず遭遇できるように此処で待ち伏せていたようだ。
実はオンボロ寮の前で何分か話し合った後、チェーノは更に音楽室にも顔を出していた。寧ろ時間で言えば其方の方が遥かに長い。
ジェイドとフロイドが将来のモストロ･ラウンジ2号店(仮)でどの位作業をしていたのかは知らないが、随分と待ちぼうけていたし、彼よりも早くに切り上げていたことは確かだろう。
『ぼくに用事があったの？』
「ええ。実は先程、貴方が監督生さん達と会っていた所をお見かけしまして」
「つーかあの寮色々ボロ過ぎて丸見えだったし」
「ふふふ、そうですね。彼等と何をお話されていたのか、僕達気になって仕方がないんです」
イソギンチャクからの解放を要求した監督生側の生徒が集まっていたのを目撃して、恐らくは何か進展があったと推測したらしい。そして、その一部始終にチェーノが偶然居合わせたという事実もしっかり把握していた。
人魚たちからの期待の視線と、ある種の圧に臆することなく彼は答える。
『アズールくんと契約したんだって、ユウくんにお話を聞いていたんだ。他の1年生の子たちには、警戒されちゃったみたい』
されちゃった、などと表現する割には傷ついても心残りになってもいないような表情で微笑む。…否、実際のところ彼には本当にどうだっていいことなのだろう。ジェイドとフロイドにはそう見て取れた。
「この後どうするかは言ってた？小エビちゃん達。どーせ金魚ちゃんの所にでも泊まるんだろうけど」
『サバナクロー寮に行くみたいだよ』
「おや。サバナクロー…ですか」
ジェイドは予期していなかった監督生の行動に意外そうな反応をする。フロイドに至ってはうげぇ〜と顔を思いっ切り歪ませていた。どうにも人魚と獣人、海と草原では相性が悪いようだ。
彼等としては、先日のマジフト大会の件でレオナと縁が出来たことは理解していたが、それでも同級生との交友関係を鑑みてハーツラビュル寮の面々に世話になりに行くものだろうとばかり考えていた。
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作者名：YAS | 作成日時：2022年9月30日 17時
