【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ3)

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学生が各々の食事を摂り終え、午後の授業へ向かわんと喧騒が渦巻く昼下がり。3年C組の教室に足を踏み入れたヴィル･シェーンハイトは、入り口より奥側に座っている青年を見遣る。

乳白色の髪を窓から差される陽に透かしながら、これから始まる講義の教科書を眺める彼。いつもその口角が少しだけ上がっていることが特徴的で、何もしていなくとも常に微笑んでいるように思えるのだ。見慣れた柔らかい表情を確認しつつ、その方向まで更に歩いて声を掛けた。

「相変わらずね、チェーノ」

『ヴィルくん、こんにちは』

呼ばれた方に視線を移したその顔は、一見すると酷く無防備に見える。本当にそうかと問われたら、ヴィルなら否と答えるのだろうが。

誰にだって平等に慈悲を与え、あどけない笑顔を振り撒くその男は、今日に限定すれば初めて出会うクラスメイト(････････････････････)のチェーノに他ならないのだった。

「昨日も公演だったんですって？人気音楽家サマも大変ね」

『ふふ、ヴィルくん程ではないよ』

「あら、それはどうかしら。アタシはどんなに遅くまで仕事があっても、次の朝の授業に出席しなくてはならないわ。間違いなくこれ(･･)はアンタだけの特権だと思うけど？」

『それもそうだね。先生たちとの、お約束だから』

ヴィルとチェーノは3年間同じクラスに所属していた。お互いに有名人で、入学時は周りから「あそことあそこだけオーラが違う！！」と散々敬遠されたこともあり、1年生の初めて出会った頃から何かと話す機会が多かった。

余談ではあるが、美しいものを好むポムフィオーレ寮生には特にチェーノのファンが多いようで、尊敬のあまり近づき難いと露骨に2人を遠ざけていたその殆どが彼等だ。

まぁ何にせよヴィルもチェーノも人付き合いは当たり前に上手ければならない立場にあったため、親交を深めることにそう時間は掛からなかった。ともすれば次第にその人となりも理解していくものだ。

だからこそヴィルは、チェーノが音楽界で圧倒的な人気を博すあまりに放課後は部活にも行かずに公演や普段の練習に励んでいること、彼の生活リズムへの配慮面から午前中の講義を後日振替という形で免除されていること、それらが教師や他の生徒から受け入れ認められるよう今の今まで学年主席を維持していることをよく分かっていた。

先程の会話に織り込まれていたこれ(･･)とは、それらの事実を意味するのである。

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