【ツイステ】君に紡ぐ夢想曲【男主】 (ページ16)

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そんな眠気がすっかり覚めてしまった夜に、入口の扉から囁かなノック音がした。

こんな遅い時間の、それもひとりだけが起きているタイミングを見計らったように。普通なら異常事態を疑う場面だが、レオナには何となくその音の主が分かっていた。特に怪しむことなく見つめていると、ゆっくりとドアがスライドされていく。

『こんばんは。起きていたんだね、レオナさん』

そこには思っていた通りの人物が立っていた。

他の生徒を起こすまいと小声でやって来たチェーノに、「何の用だ」と一言問う。何でこんな夜遅くに、とは聞かなかった。ヴィルと同様に彼もまた、音楽家の仕事が呆れるほど長い時間を要することを分かっていたので。

『おみまいです』

「ンな大した怪我なんぞしてねェよ」

『ふふ、そっか。それならいいんだ』

レオナが留年したことによって2人は今年同級生になったわけなのだが、それ以前から交流自体は何度もあった。ふわふわとした言動や見かけによらず、人並み以上に聡明で気配り上手なチェーノとは、付き合いが気楽で仲が良い部類だと認識している。

チェーノはレオナに対して敬語と崩した言葉を混ぜて話すことが多い。気兼ねなく話せる間柄なのだから、別に話し方を気にしないとは伝えてあるのだが、歳上には敬語を使うことを心がけているらしい。

彼自身の他者に対する気遣いを、それでもできる限り砕くように譲歩したが故にこんな中途半端な口調になったのだろう。決して変に顔色をうかがったり、媚び売ったりしてやろうなんて魂胆で接しているわけではないことは明白だった。

その葛藤に敬意と友愛の両方を切実に感じ取れるので(しかもチェーノがこんな話し方をする相手は自分にだけだということもあり)、何ならレオナとしてはそんなちぐはぐな喋り口を割かし気に入っていた。

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