拐って仕舞って閉じ込めて。『d!』 (ページ10)

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Episode9 ページ10

風呂を出て目にしたのは、一枚のブカブカのシャツと私の身につけていた下着と同じブランド同じサイズの下着。
…おかしなところが三四ヶ所ある。まず何故、ブカブカのシャツ、しかも彼のシャツしか置かれていないのだ。普通パジャマの流れでしょ。
お泊まりイベントのお約束みたいなものですか？いやそれはカレカノの場合のみ発生するものですから。
誘拐した場合は起こらないイベントですから。
で、なぜピッタリで好みの下着が？
覗きました？いや覗いたとして寝てる間に買いに行った訳ですよね、速すぎません？
全体的にこのシチュエーションでこのラインナップは気持ち悪くないですか？

いやまあ着るものは無いので着るが。

ブラをしてパンツをはいてシャツのボタンを閉める。
まあ予想通りにブカブカなシャツは下着ギリギリのラインをかもし出している。

これが彼氏のシャツだったら女の子はキュンとか照れたりするのだろうが誘拐犯のものである、ピッタリの下着を用意していた誘拐犯のものである。
全然キュンとするシチュエーションではない。
むしろちょっと気持ち悪いくらいだ。

…鬱先生の匂いがする。

この家の柔軟剤の匂いがした。

着替えと一緒に置かれていたタオルで髪を拭きつつ洗面所に近付く、

ドライヤー何処だろ。

無いじゃん。

｢っ…あの、ドライヤーって。｣

ドアを開けてすぐのところにいた鬱先生にちょっと引いたが冷静に聞いた。

｢あー、こないだ壊れてから僕自然乾燥で誤魔化してたんよなぁ。明日買いに行こか？｣

え、外出？え、あ、やった。一生この家から出れないかと思った。
逃げれないけど出れるのか。
と、いうか誘拐されたわけだしニュースとかで私の顔知ってる人居たりして！助かるかも。

｢良いんですか？ドライヤー無いと困るので欲しいです。行きたいです。｣

｢あ、あと。｣

これ割と重要。

｢今度からお風呂の時は脱衣場のドアの前で待つような真似はやめてくださいね。｣