拐って仕舞って閉じ込めて。『d!』 (ページ7)

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Episode6 ページ7

夕食にはちょっと予想より本格的なカレーが並んでいた。

先程よりもっとスパイシーな食欲を誘うような香りがする。
付け合せのサラダも大好きなプチトマトが私の方が多く乗っていて嬉しかった、多分また馬鹿にしたような"子供はトマト好きでしょ"みたいな感じだと思うがトマトは好きなのでそれでいい。

さて、ここで問題がある、睡眠薬の有無だ。
混ぜるならばカレーは持ってこいだと思う、溶けやすそうだし味も分からなそう。
また睡眠薬を盛られてしまうと良い気持ちはしないし最も彼とまともな会話をしないうちに眠ってしまいそうだ。
名前だけでも聞き出してやろう、逃げ切ったら警察に連絡してやる。

｢さ、はよ食べよ。｣

毎回のごとくにっこりと微笑んで私に促した。

｢待ってください。｣

怯えず堂々と。

｢どした？｣

｢私そっちがいいです。｣

要求は通るか分からないがこれで拒まれたら多分私のはお薬入り、心得て食べればどうにか…ならないな。

｢量足りひんかった？足してこよか？｣

｢いえ、そっちがいいんです。｣

そっちの貴方の食べる安全な方が！

｢ええけど、どしたの？｣

｢いえ別に、ありがとうございます。｣

安全ゲット！そして彼があれを配膳し直したら私の方にはお薬入りであった、今後の食事も怪しくなる。

｢んじゃ、ええか。頂きます。｣

｢い、頂きます。｣

食べるか？

｢ん、ちょっと辛いわ。Aさん平気？｣

食べた。じゃあ…安全か、いやこれも見越して自分の方に……？いや先入観を持ち過ぎか。

ん、普通に美味しい。

｢辛くないです。大丈夫ですよ。｣

｢そ、なら良かったわ。｣

にっこりといつもの微笑み。

｢……あの、なんて呼んだらいいですか？｣

かなり攻めた質問である。

｢ん？鬱とか大先生とか鬱先生って友人には呼ばれとるで。好きなように呼んでええから。｣

｢鬱先生でいいですか？｣

｢ええで。｣

いや本名は？！
逃げ切ったときに警察行って｢鬱って人に攫われました｣って言っても警察の人はてなマークいっぱいだよ！

作戦失敗か、でもまあ逃げることに専念すべきだな。身の安全である。