拐って仕舞って閉じ込めて。『d!』 (ページ20)

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Episode19《訂正版》ページ20

｢鬱先生…まだ起きてますか？｣

｢起きとるで｣

早く寝ましょうと言ったのだが結局眠れぬまま二時間ほどたった。

時計の秒針がカチカチいうのが何となく自分の中でこだまして怖くって全然眠れない。

｢お話しましょ、話し相手になってください｣

｢なんや、やっぱ怖いんか？｣

子供やなーっと笑う鬱先生。
子供だけども。

｢怖くないけど眠れないんです。｣

｢へー。｣

｢…今日は腕繋がないんですか｣

｢逃げないか不安で眠れんかったけどAさん逃げなそうやし。｣

｢まぁ、なんかまた連れ戻されそうだし。｣

｢犬みたいやな。｣

｢そうですね。｣

｢…逃げるかもしれませんよ。手、繋いどきましょせめて。｣

人肌が恋しいのだ。

｢逃げへんやろ、なんや俺と手繋ぎたいん？｣

クスクスと鬱先生は笑った。

｢人肌恋しいんです。｣

｢随分怖がりなんやな。｣

笑いながらもこちらを向いて左手をギュッと握ってくれた。

｢まるで恋人やな。｣

｢どちらかというと兄弟みたいでは？｣

耳元で囁かれドキッとした。
慌ててそれを否定する、このプレイボーイめ。女の子慣れしやがって！

｢実際は誘拐犯とその被害者やけどな。｣

｢不思議ですね｣

｢なんで誘拐したんやと思う？｣

｢なんでなんですか。｣

普通に気になる。

｢可愛かったから｣

｢結局それですか。｣

褒められて思わず照れてしまったが照れるシチュエーションではない。
その返しで喜ぶのは｢なんで告白したと思う？｣みたいな付き合いたてのカップルの会話だけだ。
そんな会話したことも無いけれど。

｢おん｣

｢反応に困りますね。それ。｣

｢まあそんな理由で拐われてもな。｣

｢はい。｣

｢眠れそう？｣

｢まぁ目瞑っとけば寝れますよ。｣

｢せやな。改めておやすみ｣

｢おやすみなさい｣

鬱先生に握られた左手を握り返すとふふっと愉快そうな笑いが聞こえて後ろから撫でられた。

貴方の隣なら自然と安心して眠れてしまいそうです。

…おやすみなさい。