片翼の天使 Ⅱ (ページ36)

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竜胆｢黙れよ｣

時計の音だけが響く

時を刻む音がなんだか苦しくて
もういっそ、時間が戻ればいいのに…なんて考えてしまう

不意に竜胆の腕に触れようとする手を
ギュッと握りしめた

私はもう、彼に触れる事は…出来ないから。

竜胆｢勝手に終わらせようとしてんじゃねーよ
俺から離れんな。
てか、俺がそれを許すとでも思ったわけ？｣

A｢……｣

竜胆｢なにをそんな怖がってんの
オマエは何がそんなに気に入らねぇの？｣

その時、張り詰めていた糸が切れた

少し乱暴に突き放して竜胆を睨むと驚いた顔で私を見る

A｢全部だよ！！
蘭と竜胆が私のために命をかけてまで守ろうとする所も！
無茶ばっかする所も！
私を…離してくれない所も…全部…
お願い、もう私を手放して……
守ろうなんて思わなくていいから…
私は…2人から何も奪いたくないの…｣

そうだ…答えなんてとっくに出てた。
私は、、2人に、誰にもあんな思いさせたくないから。

一緒にいる事が

一緒にいられることが当たり前で

これからもずっと、
あの手に触れることができると思っていた。

そんな日常が突然壊されたら
誰だって正気じゃいられない

毎日、孤独に襲われる日々を
死にたくなるような思いでさえ

もう、誰にもさせたくない。
2人から何も奪いたくない。

私がいることで2人を不幸な道へと辿っているのなら…

終わらせないと…

竜胆｢嫌だ｣

泣きじゃくる私を抱きしめると
彼は私より消えそうな声で話した

竜胆｢俺はオマエに幸せになって欲しい。
これから先、
ずっと笑ってられるような毎日を送って欲しい。
だから自分の想いを殺してまで
Aの側にいようって決めてたんだよ。
あの時、
俺がいなかったらオマエはここにいなかったかもしんねぇ。
失ってからじゃ絶対後悔する…
だからもう遠慮するのはやめだ｣

A｢りん…どう？｣

ギュッと抱きしめる力が強くなった。
彼の温もりが私の身体を優しく包む

この感じ…知ってる…

そうだ。
ニィがいつも私にしてくれてたんだ…

夜が怖くなって

心が苦しくなって

不意に張り詰めた糸が切れた事がある。

壊れたように泣き喚く私を、
一瞬で落ち着かせてくれた…

竜胆｢好きだよ、A。｣