ハリーポッター ◆ ～憐憫のサターン～ (ページ10)

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ヴォルデモートの姿は、蝋燭の蝋が溶けたような不気味な幽霊感がある。ヴォルデモートの本体は、黒い櫃【ひつぎ】の中にしまわれている。ヴォルデモートは、リドルの格好で、この屋敷に罠を嵌めていたのだ。ヴォルデモートイコールリドルだ。

リドルは、自分の側近を、この屋敷に出向かせ、内情を下がっていたらしい。
そんなリドルと側近の耳打ち会話を目撃する羽目になる。
リドルは、べるの母親が蹲って、血反吐を吐いている間に、己の側近に、出て来いと命令する。
曲がり角に挟む黒色のシルエット。そのシルエットは、リドルの指示によって、姿を魅せる。
すると、べるは反射的に、脊髄反射で顔を背ける。背徳感を抱いてしまう。
人が死んでいる現場で、ゆったりと構える高貴な風貌を表す。露骨なほど、凶暴性があるほどにエレガント。
そんな、どっしりと構えている2人を、怪訝(けげん)な表情で、左右の人物をキョロキョロと見る。
廊下の曲がり角に挟んでいた人物は、べるにとっては衝撃的な人物。
その衝撃的な人物は、べるの世話人のような役割の死喰人。

ただ、遺体を一目見て、軽蔑と憎悪を露骨なほど、皺を寄せる。一瞥(いちべつ)し、リドルの方へ、向かう。

べる『(えっ、あの人が、、、)』

ただ、遺体、人の死に畏怖を持つ者。本来の死喰人にはない感情である。

すべては、ヴォルデモートの『手のひらの上』で転がされていた。ーーーー薄い汚い手の上で、血が飛び散る手。

魔法界のみんなが畏怖(いふ)する気持ちもよくわかる。
けど、べるにとっては畏怖よりも不気味な幽霊のような状態のリドルが、儚そうで可憐な少女のような姿に見える。

幻覚かもしれない、クロニカルかもしれない。うすら笑みをこちらに見せつけるように、蠱惑的に笑う。リドルの姿は、まさに蝋燭。笑みが炎の灯火のような感覚を抱く。

傲然(こうぜん)と立ち止まった。すると、リドルが、べるに声をかけた。

床は真っ赤な血で濡れている。血反吐から、人間の臓器までもが、ごろごろと落ちている。すると、べるは違和感に襲われる。人間は死直後、硬直状態になる。炎天下の下なら、この光景の遺体は、まさに腐敗する状態である。

本来なら腐敗臭が漂い、吐き気を及ぼすぐらいの匂いが、充満する。しかし、腐敗臭が出ていない。

べる『(魔法で腐敗を止めている、、、)』

蝋人間を作りたいのか、マネキンでも、哀れなドールを編みあげるのか、と。