ハリーポッター ◆ ～憐憫のサターン～ (ページ11)

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腐敗臭を放出させないために、魔法でコーティングされた遺体。
さきほどまで、ぴたぴたとバタバタと身体が、上下に火傷の症状のように飛び上がったりしていた。
けど、血反吐を吐き出しながら、泡を吹いている状態だ。

白い泡が唇から、垂れ流し状態である。その様子から、壊れた人形のように思えてやまない。
蝋燭の蝋のように、溶けた様子も。魔法でコーティング、という施しを与えてもらえなかったら、既に溶けているかもしれない。

べるの視界、瞳に映り込む世界。目の前の世界、背景が急に古びたものになる。廊下の床も、窓ガラスも、壁も、すべて廃墟化している。
べるは、確信したように気がついてしまった。ここは、ブライスガウ家の本邸だと。

ブライスガウ家の本邸とわかってしまうのは遅くない。
けど、こんな状態で母親を亡くしたのか、と悲壮な表情で、赤ん坊姿であるために母親の顔はあまり覚えていない
けど、「動く写真」で母親の顔は拝めるからまだマシだ。

寝首を狩られないことが、ある意味の安泰だろう。けど、母親の「悲鳴の声」は耳に残っている。
赤ちゃんの耳の発達は、まだまだだが、あまりにも悲惨な現場を見てしまうことで、植え付けられたものによる。

普通の人間なら、正常な判断が出来る人間なら、胃の一番に、逃げている一部始終。そんな一部始終を、べるは何処となく、美しい、華麗、と心の中で呟いてしまった。人の死に立ち会うことの儚さ、美しさ、というべきだろうか。

ただ狂気に、蛇男は栄光と繁栄の印のような、灯火を打ち上げる。
天井が、朽ち果てていることから、ひび割れた煉瓦の間、隙間から、灯火の閃光が、逃げ出し竜巻のように、光る。

蛇男は、傲然(こうぜん)とふんぞり帰っている。ならでは、べるも何処かの王国の処刑場を、一瞥する傲然な女王のようだ。どこか、貴婦人の風貌がある。

べる『お母様、お母様ーーーー』

ようやく、声が出された。
しかし、母親は、とうの昔に命絶えた姿。

まるで蛇男の牢獄の中。貫禄が恐ろしいぐらい貴婦人。
貴婦人の姿のべる。

母親の眼球も飛び出ている。目のあたりが、真っ黒で筒抜け。
眼球は、攻撃で割れているから、ひび割れている。中身が、でろりん、と緑色の液体のようなものが、じゅぐり、と放射される。
そんな濁りきっているものを、べるは目の前で見せつけられる。
吐き気と頭痛が襲う、嘔吐をしそうになる勢いだ。