もっといい人【宇都宮線×雀宮駅】 (ページ14)

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その日、東京駅で用事を終わらせて、宇都宮線に乗った。
ふと空を見上げると、怪しい曇り空が広がっていた。

何か嫌な予感がする。

宇都宮駅に着いた。
乗っていた電車を見送って、改札を見る。
困った様子の乗客もいないみたいだったので、僕は休憩室へと向かった。
これから雨になるだろう。
どうせ電車はどこかで止まるだろうから、都合よくこの辺で休憩させてもらおうと思ったのだ。

幸か不幸か、休憩室には誰もいなかった。
「うわ、窓開けっ放しじゃん」
雨が降る前に閉めないと。
そう思って、僕は窓の方へ進んだ。
少し埃をかぶった窓枠に手をかけ、鍵をかけた。

何気なく窓の向こう側を見ると、新幹線の方の休憩室のバルコニーから、みやが見えた。
コーヒーカップを両手に持って、空を見上げている。
やはり天気が気になるみたいだ。
向こうの休憩室側のドアが開き、東北上官が顔を出した。
きっとその音に気づいたのだろう。みやが後ろを向く。

2人の距離が縮まる。

仕事仲間の距離感じゃない。
僕は直ぐに感じ取った。

だけど、2人から目が離せなかった。
距離がゼロになった2人から、目が離せなかった。

「間もなく、10番ホームから宇都宮線上野行きが参ります。黄色い線まで離れてお待ちください」

その声で、はっと我に返った。

逃げるようにして、僕は10番ホームへと向かい、到着していたその車両の車掌室に乗り込んだ。