野菜の育て方【はじめしゃちょーの畑】

9話　私の決断 ページ9

　
　
　
「ここ、座って」





「はい、失礼します…」





私は、はじめさんに言われるがまま座った。





「全然会えなくてごめん。来てくれてありがとう」





「いえ、こちらこそ」





はじめさんも私に対面する形で座る。





「それで、この間の仕事の話で合ってる？」





「そうです」





言おう。

私はぎゅっと手に力を込めた。





「私、最近悲しいことがあったんです。それで落ち込んでて…」





はじめさんは、私の話を黙って聞いてくれていた。


その様子に、ほっと安心して続ける。





「最初に仕事の話を聞いた時、断ろうって思ってました」





YouTuberでもある彼らについていけるか。

不安だったし、心配かけちゃうって思ってた。





「でも、はじめさんが私の料理を美味しいって言ってくれた時…」





凄く嬉しかった。

私の料理で、また笑顔にしていけたら。




私は立ち上がり、深々とお辞儀をした。





「…なのでここで働いてみたいです！お願いします」





「…え、ほんとに？」





目をぱちくりさせながら、私を見つめた。





「はい」





「…あーよかった。めちゃくちゃ嬉しい…」





「わっ、」





はじめさんの優しい手つきで

私は温かく抱きしめられる。





それを遮るように

ガチャ、とドアが開く音がした。





「あ、失礼いたしやした…」





そう言って、ドアが再びもとに戻る。

するとドア越しに複数の笑い声が響いてきた。





「ともたかぁ！いいところを…！」





はじめさんの顔はみるみる赤くなっていく。




そして、顔をドアの方に背けながら

私に手を伸ばしてきた。





「はあ…あいつら…Aちゃん、行こう」





私は、はじめさんの手を掴んで

引っ張られるように部屋から出た。



こうして、

畑の「料理」担当として




これからお仕事をしていくのだった。

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