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20話 伝わる体温 ページ20

 
 
 
はじめさんの寝室で向き合う形で座った。




「はじめさん、どうぞ」




スプーンに盛られた1杯に息を吹きかけながら

私の作った中華粥が口に放り込まれていく。



この調子ならすぐに良くなるはず。




数分も経たないうちに、





「ごちそうさま。めっちゃ美味しかった」





空になった器。

それが、食欲があることを物語っている。





「食欲があってよかったです」





食べ終わった器をおぼんに引き下げていると





「たなっちたちは何してる?」





はじめさんがぼそっと呟いた。





「今、上でご飯食べてますよ」





たなっちさんたちも中華粥が食べたいらしく

多めに作った残りを食べて貰っている。




本当は、ちゃんと昼食を作りたかったけど…





「じゃあ、今は誰も来ないってことか」





そう言いながらはじめさんは布団に横になると

ごほっ、と咳をした。





「はじめさん、大丈夫ですか?」





熱、上がってるんじゃ…。





「…Aちゃん、熱はかってくれない?」





「はい、体温計ですね」





テーブルに置いた体温計を手に取ろうと伸ばす。


しかし、もうひとつの手が私の方へ向かう。





「…そっちじゃなくて」





気づいた時には、腕がぐいっと引き寄せられて




私の手の甲に、はじめさんの頬が触れる。





「…Aちゃんの手、冷たい」





少し潤んだ目と赤みを帯びている頬。

きっと熱のせいでおかしくなっているはずなのに





…私の知らない表情に、思わず胸が高鳴る。





「はじめさんが熱すぎるんですよ。ちゃんと体温計で…」





その先を言う前に、後ろの方から物音がした。




ハッと我に返り、

手を離して視線を後ろに向けると




「たなっちさん」




いつの間に居たんだろう。

今の見てた…?





「Aちゃんご飯食べてないから、俺が代わるよ」





「いえ、私は後からでも……」





「大丈夫」という言葉をいいかけた途端、





たなっちさんの表情が


ピリッと張り詰めている感じがした。





「…それに」





たなっちさんの視線は、

私からはじめさんにうつる。





「はじめさんに話したいことがあるから」





「…では、何かあったら呼んでください」





2人の視線が交じり合う中、





ただならぬ雰囲気に戸惑いを感じながら


ドアを閉めた。

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作品ジャンル:恋愛
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影裏(プロフ) - 更新まってます!! (2022年6月6日 4時) (レス) @page33 id: 54dee88f37 (このIDを非表示/違反報告)
カシスちゃん - 次のお話が気になります! 更新待ってます (2019年10月24日 2時) (レス) id: df66e26c2f (このIDを非表示/違反報告)
名無し22819号(プロフ) - コメント失礼します、1話から全部読みました!いいお話ですね!一つ質問なんですが、このお話は誰オチですか? (2019年10月8日 13時) (レス) id: 422de7f24a (このIDを非表示/違反報告)
麗音 - 最近見始めました! (2019年9月21日 9時) (レス) id: f13e29755c (このIDを非表示/違反報告)
みりんみみ(プロフ) - かなちぃさん» お返事遅くなってしまい申し訳ありません。ありがとうございます!いつでも振り返られるように工夫してみました♪ (2019年8月17日 13時) (レス) id: d6ce8c8a6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みりんみみ | 作成日時:2018年12月23日 15時

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