ぬるい水 ページ28
蛇口から人差し指くらいの滝が流れる。それをじっと見つめて、ふと指先で塞いでみた。堪えきれなくなった水は爆発するように勢いよく辺りに飛び散った。
その飛び散った水が顔にかかってから、想像よりもぬるいことに気が付いて顔を歪める。当然、鏡に写し出された私は不機嫌そうにしていた。
髪を掻きあげて水気をはらってから、トイレから出るために扉を押す。なんだか調子が悪い。きっと気のせいだろうけど。とにかく今日はもうこのまま寝てしまおう。その前に、一応ゴンとキルアに一声かけておこうかな……
あの時、彼らとあのまま居たら、もう戻れなくなりそうだと思った。故郷のことは私にとっては、あまり言いたくないことだった。それを話してしまうほど、ゴンやキルアと仲良くなったことが怖くなった。何故怖いのかは、あまりわからないけど。
でも、さっきのぬるい水でちょっとは目が醒めたかも。きっと色々考えすぎていただけ。私は私から変わることはできない。戻れなくなるなんて、都合のいい勘違い。疲れてるんだ。
すっかり覚悟を決めてさっきの場所にもう一度戻ってみたのに、もう誰もいなかった。こうなってしまうともう一人で探す気力も残っていないため、大人しく手短な部屋に入って雑魚寝することにした。
扉を開けると、室内の明かりは落とされていて、十数名の受験者が既にひしめき合って仮眠をとっていた。扉が開いた音に何人かが目だけをこちらに動かしたが、私だと確認してすぐにまた視線を戻した。室内を見回して仮眠をとるのに最適な場所を探す。こういうときは壁際が望ましい。でも、残念ながら右側の壁際は満席。奥は出口から遠いし駄目。左側がベストかな。さっき挨拶を交わした二人の隣がちょうど空いているし、そこにしよう。なるべく足音をたてないように、クラピカという金髪の少年の隣に、壁を背にして体育座りをした。もう寝ているのだろうか。それなら気を張る必要はなさそうだ。それに、なんだか疲れがどっと押し寄せてきて、気を張る余裕があるかどうか…
クラピカ「A、といったか。ゴンたちはどうしたんだ？」
起きてるんかい。もう寝ててくれよ。クラピカは少し大人びた口調と声で、まるで独り言のようにそう呟く。
「私がトイレに行ってる間にどっか行っちゃった。多分何処かで遊んでるんだよ」
私も彼の方は向かずに、靴のつま先を眺めながら独り言のように言った。
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ナツメ(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます！奈乃さんからのお言葉を励みに頑張ります！ (2017年8月21日 18時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
奈乃(プロフ) - 更新楽しみにしてます。頑張ってください！ (2017年8月21日 18時) (レス) id: 26a98954d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2017年8月2日 12時
