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『 銀さんは、鈍感すぎなんですよ。』
「 …なら、お前の方が鈍感なんじゃねェの。」
『 はい? 』
「 飼い主のことほっといて他のとこ行ってる愛犬って、お前のことなんだけど。」
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はあ…?と曖昧な返事をすると、銀さんは頭を持ち上げて、ため息混じりに続けた。
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「 お前が、総一郎くんを傘の中に入れて万事屋の前歩いてんの見て、思わず出てきちまったんだよ。」
『 え、』
「 嫉妬だろ嫉妬。」
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こんな年にもなってありえねェよな、なんて言って、頭をガシガシとかく銀さん。
…やっぱり、貴方の方が馬鹿ですね。
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『 …銀さん、』
「 なんだよ。」
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わたしは、銀さんの肩をぐっと引き、驚いてわたしを見上げた銀さんの顔にまたタオルをかけ、タオル越しのキスをした。
ほんの少し、軽く触れただけだから、銀さんが気付いているかはわからない。
でも、黙ったままでいる様子を見ると、きっと気付いているのだろう。
そして、タオルを退くと、呆然とする銀さんがそこにいた。
もう、ここまできたら言うしかない。
銀さんの顔すれすれまで自分の顔を近づけて、口を開いた。
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『 銀さん、好きで… 』
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そこまで言って、また先の言葉を銀さんに遮られた。
今度は、腕を掴まれたからではない。
わたしの頭の後ろに伸びてきた手に頭を押さえられ、今度は銀さんからキスをされた。
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「 こっち来なさい。」
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唇が離れると、銀さんはそう言ってわたしを正面に立たせた。
そして、何をするのかと思えば、ぐっと腕を引かれ、体制を崩したわたしは銀さんの膝の上。
目の前には、わたしの顔を見上げる銀さんの顔があって。
視線が絡むと、恥ずかしさと愛しさがこみ上げてきた。
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『 銀さ、恥ずかしい。』
「 我慢しろ。」
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そう言って腕を掴むから、何も言えなくなって、ただ黙って銀さんを見つめた。
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「 好きだ。」
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くさもち(プロフ) - 初めまして。こちらの短編の銀さんが素敵だったのでコメントさせて頂きます。中々結ばれない切ない感じと、最後のほのぼのとした雰囲気が好み過ぎて……! 無理せずに更新、頑張ってください。応援しています (2016年3月27日 11時) (レス) id: 5e71046f26 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 銀さんかっこいいーーーー!!!!更新頑張って下さい!応援します!! (2016年1月24日 22時) (レス) id: a208ae872c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりもクン。 | 作成日時:2015年12月13日 0時