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さて、問題はマブだ。
勿論入学から関係を持ってきた二人には、何が何でも話して測りきれないお礼を述べたい。
しかし、どうしたことだろう__
「A、フォーク持ったまま手ェ止まってるけど。どした?」
「わ、うん。えっと・・・・・・」
ちらりと目の前に座る二人の顔色を窺う。するとだらだらと何処からともなく冷や汗が額を流れ、またしても喉から出かかった言葉は唾と同じように飲み込まれた。このように話そうとするのだが話せない__ということが何度も続き、遂にお昼休みになってしまったのである。
「なんか今日歯切れ悪くね〜?」
「何かあったのか?悩みは遠慮なく言えよ」
「あ、うんありがとう・・・。あ、あのね」
言おう。言うしかない。これを逃したらもう機会はやってこない!
スウ、と息を吸って目の前の二人を見据える。
「実は、帰る方法が見つかったの」
二人の声よりも早く響いたのは、カシャン!という金属音。直ぐさまデュースが謝る。嗚呼、スプーンが落ちた音だ。
「・・・・・・え、じゃあお前、帰んの?」
「・・・うん。二週間後だけど」
エースの表情は何ともいえないものだった。吃驚なのか、焦燥なのか、はたまた別の何かなのか、よく掴めない。
沈黙。ガヤガヤと雑音ばかりの食堂が遠くなる。顔を伏せた二人は、徐に顔を上げた。笑っている?
「・・・んだよ、先言えよ!」
「え?」
「取り乱して済まない。良かったじゃないか、帰る方法が見つかって」
「・・・う、うん!」
「いや、まぁオレたちマブじゃん!何か変わるとかねーし、二週間思いっきり楽しもうぜ」
「そうだぞ。残り少ないしできること何でもしような!」
「うん、うん!ありがとう!!」
二人の笑顔が普段通りだと安堵しきった私には、全く気がつけなかった。私の隣でご飯を食べていたグリムの手は何時の間にか止まって、珍しくずっと無言だったことなんて。
プロローグ 終
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作者名:桃辻 | 作成日時:2022年1月16日 14時