第２９話 ページ4
谷崎は、いつもと同じように出社した。
与謝野に礼を言い、ナオミが無事学校へ行ったことを確かめると、通常業務へと戻っていく。筈だった。
ドンと響いたのは、ドアを荒々しく開ける音。何事かと、一同ドアの方を見る。
ドアを開けたのは、Aでも敵襲でもない、Aの母親だった。
「うちの娘が、昨日から帰って来ないんです！」
入ってくるなりそう叫ぶ。
国木田が訳を聞こうと近寄ったが、かなり取り乱している。
「Aが、帰って来ないんです。Aが……今までこんな遅くなることなんてありませんでした、絶対に、なにかあったんです。お願いします、娘を見つけてください、お願いします」
まともにやり取りできる様子ではない。とりあえず、何か話せるまで落ち着かせようと、ソファーに座らせる。
さて、この件の担当は谷崎だ。国木田から視線を受けて、谷崎は立ち上がった。これから彼の仕事が始まる。
母親に聞き取りをすると、昨夜Aは母親からの連絡には反応せず、それから音信不通らしい。丁度谷崎の家にいた時間帯だ。
朝、Aは一人で彼の家を出た。谷崎は、そこでせめて近くの駅まででも彼女に付いて行ってやらなかったことを悔やんだ。
彼女の母親には、彼女の捜索を最優先に進めると約束して、一旦は引き取ってもらった。帰り際に、よろしくお願いしますと何度も頭を下げる母親の姿に、谷崎は居たたまれない思いでいた。
「私」
突如として、太宰が口を開く。
「今朝彼女のことを見かけたよ」
国木田が尋ねる。
「本当か？何処でだ」
谷崎はドキリと心臓が脈打つのを感じた。まだ誰にも、Aを一晩泊めた事は行っていない。勿論ナオミは知っているが、彼女はまだ学校。与謝野も、ここにはいない。
もし太宰が、自分とAの関係を見破っていたとして――――、彼ならとっくに見破っているだろうが、この場で公表されるのは嫌だった。
依頼人と不適切な関係に陥った。笑えない。国木田のお説教くらいで済むのなら御の字だ。下手をすれば、解雇さえありえる。
「うちの社員寮の前でだよ。谷崎君の部屋から出てきたように見えたけど、違ったかい？」
にこやかに、太宰は谷崎に問いかけた。国木田は目を見張って太宰を見、そして谷崎を見つめた。
もう逃げられない。
谷崎は、渋々一度頷いた。
「はい、確かに、昨日は一緒に居ました」
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します！谷崎くん最推しなので超嬉しいし面白かったです！ (2022年2月8日 9時) (
レス) @page18 id: 04c952a5b3 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - 雪のさん» りょです!ｗ (2018年11月11日 19時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪の(プロフ) - 柘榴さん» ありがとうございます。公式から発表されていないことに触れることに抵抗のある方もいらっしゃるので、注意書きをしています。 (2018年11月11日 18時) (レス) id: 4ee9ff3c65 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - 夢小説だから過去とかめっちゃ捏造しても問題ない!と私は思う (2018年11月2日 21時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
雪の(プロフ) - アカリさん» ありがとうございます。次回作も期待に添えるような作品にできるように頑張ります。 (2018年8月17日 21時) (レス) id: 4ee9ff3c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪の | 作者ホームページ：https://twitter.com/snow_snow_dream?s=09
作成日時：2018年6月30日 22時
