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テレビの動物番組でよくペットの猫が映し出されているのをよく見かけるが、あんな風に甘えてきたりはしない。


テレビで見るような関係を望んでいるのは確かだけど、ここは仕方ないところだ。クロはクロなのだから。


有名な言葉を使わせてもらえば、『他所は他所。家は家』だろうか。


クールで孤立しすぎていて、我が家の主と化したスタイリッシュな姿に目を奪われていると、千切くんが私へ話しかけた。


「俺サッカーやってるっつっただろ?」


「うん。そうだね」


千切くんがサッカー部だと知ったあの夏の日から、彼は時折サッカーの話をするようになった。


でもその内容は少し変わったもの。
部活がどうだったとか、そんな話ではない。彼の将来だったりとか、そこへ思う気持ちだとか、少し難しいもの。


けれど、私はそんな話を聴くのも好きだった。
私にはない新しい感覚や視点で話されるから、興味を持てたのかもしれない。


今日はどんな話をしてくれるんだろうか。私はそう思って耳を傾けた。


「そろそろ県大会があるんだけど」


「へえ、大きい大会だね」


うちの高校も別に強い訳では無いがサッカー部は存在する。そういえば彼らもそんなことを話してたかも、なんて。


運動部にしかわからない、大会前の緊張があったりするのだろうか。それもそれで青春らしくていいと思う。
帰宅部からしてもちょっと羨ましかったりするし。


でもいつも飄々としてる千切くんは、緊張なんてしないんだろう。なんとなくだけどわかる。


「Aさ、見に来いよ」


「え?」


私は何かに誘われるなんて一切思っていなかったので、思わず度肝を抜かれた。


『行く!』とか『見てみたい!』なんて感情よりは、『私が行っていいのか』という気持ちが大きかった。


応援とか観戦に一人で来てる人ってあんまり見ないし、一人で行ったら変な目で見られないだろうか。


人目を気にしないように頑張ったって、流石にまだ気にするところはある。


「私が行ってもいいのかな」


「俺が言ってんだからいいだろ。俺が皆んなぶち抜いて見せるから、ちゃんと見とけよ」


そう言った千切くんの顔は、自信に満ち溢れていた。
不思議とその姿が、とても綺麗に思えた。


私のためってわけじゃ、ないんだろうけど。
でも来てほしいって思ってくれてるなら、行かないわけがない。


それに彼の走りも見てみたい。

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作者名:エネマリ | 作成日時:2023年4月2日 19時

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