130.晩酌 ページ39
「…フゥ」
日は瞬く間に暮れ、真選組の再出発を祝う宴会が行われた夜。
私はそれに参加せず、1人屋根の上で紫煙をくゆらせていた。普段はこんなの吸わないが、まあ、たまにはいいだろう
土「おい」
「…なに」
後ろからいきなり声をかけられ、危うく落ちそうになる
振り向くとそこには着流し姿の十四郎がいた。
顔が赤く火照っているところを見るにどうやら酔っているらしい
…酔っていなかったらまず私になんか話しかけてこないだろうし
土「何してやがんだ、こんなところで」
「それはなに、私もあの中に参加して欲しいってこと?」
久々にちゃんとした十四郎と話すので、距離感が難しい。一体今までどうやって喋っていたっけ。
ああ、まず喋ってすら居なかったななんて悲しいことを思い出す
溜息をつくように私は吸い込んだ煙を吐く。
土「んな訳ねェだろ。いねェから気になっただけだ。」
「へぇ…気になるんだね、私がいなくなることがそんなに気になるんだ。」
土「おい、それ以上口を開けば殺すぞ」
「…はぁ。で、用件は何?」
どうやら巫山戯すぎたようだ。月明かりに照らされた端正な顔立ちの十四郎のこめかみには、くっきりと青スジが立っている
脱線した話を元に戻そうと真面目な顔つきに戻り、私は十四郎に訊ねた
土「万事屋から聞いた。…世話んなったな」
「はぁ、そんなこと。別に、ただの気まぐれだし」
土「俺を庇って一度クビになったそうだな」
「…」
ああ、トシちゃんとの記憶の共有はなんとなく出来ているんだったっけ。それに、きっと近藤さん達から聞いたんだろう、余計なことを…
「十四郎を庇いたかったわけじゃない。私もただ伊東が気に食わなかった。アイツが動かす真選組にいる価値が無いと、そう思っただけだよ」
土「…そうか」
「それに、十四郎は私とよろしくするつもりないんでしょ。だったら私に礼なんか言わなくていいよ」
土「…ああ」
私が前を向き、月を眺める間に十四郎は居なくなったようで、辺りはまた一段と静かになる
瞬きと共に左手に持っていたお猪口をグイ、と口に運び酒を飲む。私には1人晩酌がお似合いだ、みんなと騒ぐのはたまにでいい
そしてそのたまには、今日の昼あった。だったら尚更静かに過ごしたい。武州時代から思っていたが…
「バカ騒ぎは、月に一度で充分だ」
今日一の盛大な溜息をつき、私は屋根上に思い切り寝転んだのだった
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えんさん(プロフ) - はにまるさん» はにまるさんコメントありがとうございます!!ま、マジですか……!!一気見してくださるなんてめちゃくちゃ嬉しいです!!!ありがとうございます!!これからも亀更新ですが頑張っていきますのでよろしくお願いします!! (2020年4月22日 3時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
はにまる - 一気見しちゃいました。とっても面白いです!お忙しい中素敵な作品をありがとうございます (2020年4月15日 10時) (レス) id: 20c0fe3fbc (このIDを非表示/違反報告)
えんさん(プロフ) - 美月さん» 美月様…同い年なのですね!!大変ですよね、この上にさらに弔事まで重なってしまって毎日ヘトヘトです…汗 なんて嬉しいことを言ってくださるんですか….!!ありがとうございます!!頑張ります! (2019年12月16日 1時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - インターンや就活準備、大変ですよね。おそらくえんさん様と同学年なのですが、私も忙しい日々の息抜きがこれを読むことになってます(^ ^)更新、楽しみにしてます!! (2019年12月15日 23時) (レス) id: c64cf7ce50 (このIDを非表示/違反報告)
えんさん(プロフ) - かっちゃんさん» かっちゃん様!お待たせしてしまい申し訳ないです!!本当にありがとうございます!(´TωT`) (2019年12月13日 15時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えんさん | 作成日時:2019年12月3日 23時