126.夜闇 ページ34
No side
夜闇に浮かぶひとつの舟
三味線の美しい音色が響き渡るその舟に、彼らはいた
高「そうかい。伊東は死に、真選組が生き残ったか…存外、まだまだ幕府も丈夫じゃねェか。…いや、伊東が脆かったのか、それとも万斉。お前が弱かったのか」
2つの三味線の音は静かに重なり合っていたが、高杉は万斉へと目を向けた瞬間に三味線から手を離す
一瞬強くなった万斉の三味線は、留まらずにその音色を外へと運んでいた
万「元々今回の仕事は、真選組の目を幕府中央から引き離すのが目的。春雨が無事密航し中央との密約が成ったとなれば戦闘の必要も無し。牽制の意は果たしたでござる」
高「俺ァ真選組を潰すつもりで行けと言ったはずだ」
万「何事にも重要なのはノリとリズムでござる、これを欠けば何事も上手く行かぬ。即座に退くのが拙者のやり方」
高杉が弾くのをやめたからか、万斉も三味線を手に持ちながら舟を去ろうと立ち上がる
高「万斉、俺の歌にはノれねェのか」
その言葉で、万斉は足を止めた。
思案する様子もなく、彼は静かにこう口にする
万「白夜叉が、俺の護るものは今も昔も何一つ変わらん、と。晋助…何か分かるか」
白夜叉という言葉を発した瞬間、高杉の目の色が変わる。それは、明らかな殺意の眼であった
万「最後まで聴きたくなってしまったでござるよ。」
万斉の頭には、かの日の情景が浮かぶ。
倒れた隊士を刺し殺そうとしたその瞬間、また、真選組を滅ぼそうとした瞬間、伊東が皆を庇った瞬間、白夜叉の––––––
万「…奴らの歌に聴き惚れた。拙者の負けでござる」
彼は、少し楽しそうに笑みを零す
そして、立ち去ろうとした瞬間、何かを思い出したようにまた立ち止まった
万「ああ、そういえば」
高「まだ何かあんのか」
万「晋助、真選組は女禁制のはずでござるな」
高「それがどうした」
万「…また子が応戦した真選組は、女隊士だった」
高「…は?」
万「また子から聞いた。奴は間違いなく真選組隊士。そしてこれは拙者の推測だが、奴は……」
高「名前は」
万「知らぬ、が…顔は土方に瓜二つだったと」
高「…元攘夷志士の女で、んな人相が悪いやつなんざ1人だけだ」
"夕顔A"
高杉はクツクツと笑い、また三味線を弾き始める
万斉は何も言わず、舟を去っていった
夜闇は、深くなるばかりだった
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えんさん(プロフ) - はにまるさん» はにまるさんコメントありがとうございます!!ま、マジですか……!!一気見してくださるなんてめちゃくちゃ嬉しいです!!!ありがとうございます!!これからも亀更新ですが頑張っていきますのでよろしくお願いします!! (2020年4月22日 3時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
はにまる - 一気見しちゃいました。とっても面白いです!お忙しい中素敵な作品をありがとうございます (2020年4月15日 10時) (レス) id: 20c0fe3fbc (このIDを非表示/違反報告)
えんさん(プロフ) - 美月さん» 美月様…同い年なのですね!!大変ですよね、この上にさらに弔事まで重なってしまって毎日ヘトヘトです…汗 なんて嬉しいことを言ってくださるんですか….!!ありがとうございます!!頑張ります! (2019年12月16日 1時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - インターンや就活準備、大変ですよね。おそらくえんさん様と同学年なのですが、私も忙しい日々の息抜きがこれを読むことになってます(^ ^)更新、楽しみにしてます!! (2019年12月15日 23時) (レス) id: c64cf7ce50 (このIDを非表示/違反報告)
えんさん(プロフ) - かっちゃんさん» かっちゃん様!お待たせしてしまい申し訳ないです!!本当にありがとうございます!(´TωT`) (2019年12月13日 15時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えんさん | 作成日時:2019年12月3日 23時