66.見覚えのある名 ページ21
「はぁ…はぁ…着、いた…」
追手からなんとか逃れ、私の暮らしていたあの長屋が目に入る
ようやく着いたその頃には、私の足はもう使い物にならなくなっていた
ガクガクと鳴る膝を押さえながらなんとか戸を開ける
パサ
「……手紙?」
倒れ込むように玄関に座ると、戸に挟まっていた手紙がハラリと自分の膝へ落ちてくる
真っ白なその封筒を拾うと、その裏には、見覚えのある名前が刻まれていた
「おきた、みつば…!?ミツバさん、なんでここが…!」
私の行き先は、誰にも教えてなかったのに。
何故、彼女はここまで来た、来れたんだ
「…」
ほとんど無意識で、私はその封筒を開けた
そこにはミツバさんらしい繊細な文字でたくさんのことが綴られていた
ーーーー
土方A殿
拝啓 木々が色づく季節になってきましたね。
Aさん、変わらずお元気でしょうか
突然ごめんなさいね、だってAさんがどこにいるか分からなかったものですから。沢山の人に聞き回って教えていただいたんですよ。
話は変わりますが、あの後、総ちゃん達はAさんがいなくなってしまったのを機に江戸へ行くのをやめました
今も変わらず武州で鍛錬する日々を送っています。
ーーーー
え
「十四郎達が、江戸に行くのをやめた…?」
なんで、あんなに心待ちにしてたのに…!?
私のせいで江戸に行かなかったってこと…?
ーーーー
これを読んだら、きっと、Aさんは私のせいで、なんて言うでしょう。でも、それは違うと思います。
私も、確かなことは分かりませんが、Aさんがいつか、武州に帰ってきたら。今度こそみんなで江戸に行きたいと総ちゃんが言ってましたから。Aさんが一緒にいなきゃ嫌なんです。私も、近藤さんも総ちゃんも…あの人も。
…Aさん、貴女からの手紙読みました。貴女が私達のことが大好き、と言ってくれたように私達も貴女のことが大好きなんです。
でも、Aさんがもうここに帰ってきたくないのなら、どうか
江戸に行ってください
私の最初で最後のお願いです。深くは聞かないでくださいね。
それでは、またいつか
敬具
沖田ミツバ
ーーーー
「……」
江戸、か
ここもいつか天人にバレてしまうだろうし…
隠れ蓑としては使える場所かもしれないな
そんな不純な動機で、私はミツバさんの言葉を飲み込むことにしたんだ
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えんさん(プロフ) - ミカさん» ミカさんまたまたコメントありがとうございます!!そう言っていただけると本当に嬉しい限りです!!^^ はい!!頑張りますね!! (2019年10月19日 2時) (レス) id: cfaad42937 (このIDを非表示/違反報告)
ミカ(プロフ) - 続編ありがとうございます!最初から読ませてもらっていますが、もう、めっちゃ好きですw更新無理せず頑張ってください!! (2019年10月17日 17時) (レス) id: ee1104400e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えんさん | 作成日時:2019年10月15日 23時