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それがかわいくて、私は手を伸ばしてシリウスの頭を撫でる。少し拘束が緩くなったので、腕から抜け出してベッドの上へ這いずり、シリウスの頭を抱えるように包み込んだ。するとシリウスは私の胸にすり寄り、穏やかな顔で寝息を立て始めた。その姿は完全に飼い主に気を許した大型犬だ。
朝の7時。アラームが鳴る前に止める。私の胸に顔を埋めて眠るシリウスの髪をやさしく梳きながら、起きて、と声をかけた。シリウスは、ん−、と甘えるように私を強く抱きしめる。どうやら起きたくないらしい。
「…起きたら君の腕の中なんて、なんて幸せな目覚めだろう…」
まだ寝起きの掠れ声でシリウスはつぶやく。そんなの、私のセリフだ。前世から憧れていたシリウスの腕の中で目覚めたのだ。後ろから刺されても文句も言えない状況だ。現世でも気に入らない相手にはすぐに牙を剥くような獰猛な大型犬が、幸せだ、と言って私にすり寄るのだ。幸せ以外の何物でもない。
「なんというか、…泣きそうだ」
本当に感極まった声でそういうので、思わずシリウスの顔を確認してしまった。泣いてこそいなかったけれど、本当に泣きそうな顔をしていた。
「朝起きて、私が居るだけで、泣くほど幸せ?」
「これ以上の幸せは無いよ」
ちゅ、と唇にキスを落とされる。その顔は活気に満ちている。であった頃より大人になったシリウスは、少しずつ映画で見たシリウスに近づいていっている。ふとしたときに、手配書の彼を思い出すくらいには。しかし、やせ細った彼ではなく、血色もよくちゃんと筋肉のついた彼。それを確認して、私は安心するのだ。
「シリウスが淹れたコーヒーが飲みたい」
「ふ、仰せのままに」
シリウスはそう言って起き上がり、私を横抱きして階段を下りる。その手には私のスリッパがひっかけられている。ふかふかのソファに降ろされて、ご丁寧にスリッパをはかされる。シリウスはその隣に寄り添うように座ってテレビをつけた。キッチンではカチャカチャと食器だけが踊っていて、サラサラとドリッパーにコーヒー粉が入れられる音がする。シリウスは濃いコーヒーが好きなようで、休暇中に我が家に泊まっていた時、彼が作るコーヒーは両親のものよりも濃い。私はそれが好きだった。
ふよふよと魔法でこちらに飛んでくるコーヒーカップ。カタン、と小さな音を立てて目の前のローテーブルに配膳された。朝にコーヒーを飲むとなんでこんなに落ち着くのだろう。特に、隣にシリウスがいるとより一層。
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アネモネ(プロフ) - 樑さん» コメントありがとうございます!大変恐縮です!できるだけ高頻度で更新していきますのでこれからもよろしくお願いします! (2023年1月25日 9時) (レス) id: ddc7a24158 (このIDを非表示/違反報告)
樑(プロフ) - こんなにどっぷりハマったのは初めてです!更新楽しみにしています! (2023年1月24日 14時) (レス) @page32 id: 50d680b84b (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - なのこ5546さん» コメントありがとうございます!こちらこそこんな長い話を呼んでくださりありがとうございます!更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします (2023年1月23日 21時) (レス) id: ddc7a24158 (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 他にはない設定でとても面白かったです!!一気に読んじゃいました^^更新は大変だと思いますが頑張って下さい、応援しています! (2023年1月23日 11時) (レス) @page23 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - ありがとうございます (2023年1月20日 18時) (レス) id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アネモネ | 作成日時:2023年1月12日 6時