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棚に入っているグラスを一つ手に取って、流し台の水を汲む。杖は寝室に置いてきてしまった。もともと実家ではマグル式の生活をしていたので、アグアメンティで水を汲むのには少しだけ違和感があるのだ。
水を一口飲むと頭が冴えていく気がする。そもそもみんなが何をしているのか教えてもらえないのは自業自得だ。今は確実に大人しくして信用を勝ち取ったほうがいい。別に私一人でもできることはあるのだ。いや、こうやって何でも一人でやろうとするから信用を失ったんだけど、そうじゃなくて。もうすぐ闇払い局で面接がある。私とジェームズはちゃんと応募した。ジェームズとは違う部へ配属してもらえるように頼む予定だ。これで情報が偏ることもないだろう。もう一人で無茶をしようなんて思っていないけれど、何かしたいという気持ちはあるのだ。
水をもう一口飲もう、とグラスを傾けるとリビングからキッチンにかけての電気が突然着く。まぶしくて思わず目をつぶり、口元から水が少しこぼれてしまった。それを突然拭われて驚き、手に持っていたグラスから手を放す。しかし、割れる音は訪れず、不思議に思った私は何度も瞬きをしながら光に目を慣れさせ、目を開いた。シリウスがグラスを持っていてくれたようだ。
私は音もなく背後に回っていたシリウスにお礼を言う。彼の顔を見上げると、もともと白い肌から血色がなくなっていて、真っ白だ。嫌な夢でも見たのだろうか。私はシリウスの頬を両手で包み、親指で頬を撫でた。なるべく安心させるように。
「どうしたのシリウス。怖い夢でも見た?」
「…いや、Aが居なかったから」
「…ごめんねシリウス。喉が渇いちゃって」
シリウスはグラスをこと、と置いて私を抱きしめる。そして、かすれた声で、一言声をかけてくれ、と懇願するように言った。気持ちよく寝ているシリウスを起こすだなんて発想はなかった。少しベッドを離れるだけで彼をここまで不安にさせるとは思わなかった。私は彼の首に腕を回して謝罪を口にした。
ベッドに戻り、今度こそ眠りにつく。先ほどよりも強く抱きしめられていて、絶対に離さないという意思が感じられる。私は大人しく彼の腕の中で目を閉じ、おやすみ、と言って眠りについた。彼から返されるおやすみの言葉に幸せを感じながら。
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イギリスの結婚は、まず式を挙げてから籍を入れるみたいですね。書き直したかったですが諦めました。
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アネモネ(プロフ) - 樑さん» コメントありがとうございます!大変恐縮です!できるだけ高頻度で更新していきますのでこれからもよろしくお願いします! (2023年1月25日 9時) (レス) id: ddc7a24158 (このIDを非表示/違反報告)
樑(プロフ) - こんなにどっぷりハマったのは初めてです!更新楽しみにしています! (2023年1月24日 14時) (レス) @page32 id: 50d680b84b (このIDを非表示/違反報告)
アネモネ(プロフ) - なのこ5546さん» コメントありがとうございます!こちらこそこんな長い話を呼んでくださりありがとうございます!更新頑張りますので、これからもよろしくお願いします (2023年1月23日 21時) (レス) id: ddc7a24158 (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 他にはない設定でとても面白かったです!!一気に読んじゃいました^^更新は大変だと思いますが頑張って下さい、応援しています! (2023年1月23日 11時) (レス) @page23 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - ありがとうございます (2023年1月20日 18時) (レス) id: fcb0ec653e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アネモネ | 作成日時:2023年1月12日 6時