6 ページ8
『寒い…』
先刻から降ってきた雨が止む気配は一向になく、むしろ土砂降りになってしまった為、やむを得なく歩いているのだが
服はとうにグッショリ濡れてしまい身体も重く
もう空は真っ暗で吐息も白い
『こんな事なら傘ぐらい持ってくればよかった…。』
蝶屋敷を出る前の自分の浅はかな行動に心底嫌気がさす
こんな夜は何だか───
ガサッ
背後から物音がした
「若い女のニンゲンかァ、久しぶりだな。」
低くくぐもった声が耳に響く
喉の奥ががヒュッと鳴った
あぁ
最も危惧していたことが起きてしまった
『鬼だ。』
つい口から声が出てしまう
どうしよう
そんな言葉で私の頭は埋め尽くされた
普通の鬼殺隊員ならそんな疑問は生まれないのかもしれない
だが私は最近は全然鍛錬もしていないし
日輪刀なんて触ってすらない
というか今持っていないのだ
逃げるしかない
鬼に気づいてからわずか3秒の間にこの考えに至った
もしこれで新たに犠牲者が出てしまったら─
なんて、そんな考えを打ち消してしまうほど
私は臆病者なのだ
.
走って走って
走り続けて
ようやく灯火が見えた
蝶屋敷についたのだ
肩で呼吸を整えながら
やっとの思いで門を開け、屋敷の中に入った
きっと私はこの時安心したのだろう
突如、強い眠気に襲われ玄関で倒れてしまった
2149人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
re-to(プロフ) - 気づいたら目から涙が流れてました。誰も幸せにならない話は久しぶりに読んだので色んな人の気持ちを考えるとすごく辛くなりました。とてもいい話を書いてくださりありがとうございます。 (2022年6月10日 21時) (レス) @page36 id: 15c8ca49bf (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - 妹ちゃん…。なんていうか、鬱になる終わり方でしたね。姉に認められたい、皆に認められたいだけどその期待に答えられなかった。辛いですよね…。今回はしのぶちゃんが凄い嫌な感じって言ったらいいのかななんか凄くて私なら恨みそうです。私なら鬼になりたいって思う (2021年9月27日 23時) (レス) @page36 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
まチョコ - しのぶさん…本当はこんなことしたくなかったんだろうな…。本当は妹として…認めたかったんだろうな。悲しい。頑張ってください。 (2021年9月27日 21時) (レス) @page34 id: b9e98ac7b6 (このIDを非表示/違反報告)
mitunari1985(プロフ) - す、凄い鬱になる…のに何回も読んでしまうのは何故なんだ…この世界線のしのぶさんカナエさんにガチギレされるのでは?自殺に追い込んでる訳だし、皆んなと結託して攻撃してるしなぁ (2021年5月25日 0時) (レス) id: a4d6628367 (このIDを非表示/違反報告)
パッショーネ・バルサン - 貴様っ(ジョジョを)見ているなっ! (2020年6月25日 20時) (レス) id: e3cb6683f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小夜子 | 作成日時:2020年1月27日 17時