ドアを開けたらドストエフスキーが鼻水垂らして号泣していた【文スト】

番外編【水族館デートする】 ページ25

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「僕、アザラシが見たいんです」


「…………はぁ？」


まただよ、まただよ、なんなのよこの男は！
今日は、壊れた電子レンジを新しく買い直そうと家電屋に行った帰りにまた、このよく分からない男に会ってしまった。

つくづく私は運がない。

「アザラシってとっても可愛らしいですよね。まるで、Aさんのように…」


「そ、うですか？」



ジェスチャーで丸をつくり目を細めるフョードルはなんだか子供っぽくて、その体格とのギャップに驚いてしまう。
…でも、この人にギャップもクソもない。
人の吐いた嘔吐物を飲み込むような人間だ。



突然、「アザラシが見たい」なんて言われてどう返せばいいのでしょうか。見れるようなアドバイスをしたらいいのかな…



「アザラシなら…水族館に行けば見れますよ。
ドストエフスキーさん、水族館に行ってみてはどうですか？」


「スイゾクカン？…すいぞくかん…水族館…水族館ってあの魚の……あ〜…………あ！なるほど！そういうことですね…。っふふ、Aさんもっとストレートに言ってくれてもいいのですよ」


「え？……なんのこと……」



キョトンとしている私を置いて、1人確信したかのように嬉しそうに笑って、ドストエフスキーは黒髪をさらりと揺らした。なにか誤解されている気がしなくもない。


「Aさんは僕と水族館デートしたいんですよね。はい、ええ、もちろん。水族館デートしましょう。……そして僕は念願のアザラシをみます」


誤解されてた。完璧に違うんだよ。ドストエフスキー。
水族館 デート …………？？？？
アザラシを見たい人に水族館に行くアドバイスをしてどうすればこの結論になるのだ。
っとゆうか、なんでこんなアザラシにこだわりがあるんだろう。

断りたいところだけど…でもこの前のクリスマスにあんな高価そうなネックレスを貰った…いや、勝手に渡されたけど…。
ここは、嫌々ながら行った方がいいのだろうか…。





仕方ない。この男がアザラシを見る為。
そう、アザラシを見る為よ……………！








「わかりました……、私もアザラシ観察の為、水族館に同行します。」








「堅苦しいですね。僕と水族館デート、ですよ？」

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