set 8 おおかみは赤ずきんに恋をした【四葉環】 ページ23
｢じゃあ、お母さん。行ってくるね。｣
いつもの赤色の頭巾を被って、家から出る
｢気をつけて行くのよ。最近狼がいるらしいから｣
｢わかった。いってきます｣
後ろにお母さんからの視線を感じながら、歩き出した
おばあちゃん家まで30分ほど、通りは木に覆われて少し薄暗い
昼間というのに、なんだか不思議な森…
少し歩くと道は2つに分かれてきた
｢ゴホ、えっとー、近道はと…左か｣
左の道を歩こうとしたその時、木に寄りかかっている黒い影がみえた
｢…っ！？｣
自分でも訳が分からなかった
得体の知れないものを見たから怖いのか、いや…
何か嫌な予感がしたのだ、何かが始まりそうで
とにかく必死で、その場を逃げた
｢はぁ、はぁ、はぁ｣
左の道を引き返して、右の道へと変更した
なんで、こんな、私怖がりじゃないのに
間違いなく勘だが、あそこに行ったら行けない気がした
なんだか取り返しのつかないことになりそうだったんだ
ーーーーー
｢あー。暇｣
木にもたれ掛けて項垂れていると、大きな雲が辺りを覆い尽くそうとしていた
｢やべ、帰るか｣
雨が降って濡れるのはいやだ、毛が張り付いてベタベタすんだもん
｢ん、なんだあれ｣
数メートル先に、人が倒れている
近づいてみると、赤頭巾を被った女の子のようだ
苦しそうに顔を歪めている
どうしよ、こいつ人里のほうに連れて行った方が…
でもそーちゃんから、『環くん、むやみに人間と関わったらいけないよ』って言われてるし…
幸い、狼の俺のことには気づいていないようだ
女の子をそば目ながら、申し訳ないが立ち去ろうとした
｢たすけて、はぁ、はぁ｣
助けを求めるその声に、俺の足は立ち止まった
振り返ると、女の子は顔を赤くして、呼吸を荒らげていた
｢…っ、もうどうにでもなれ！｣
俺は、女の子をひょいとかかげた
｢かるっ、てかあつっ｣
額に手を当ててみると、火傷しそうなくらい熱く、おそらく熱が出ているようだ
ぬかるんだ道を得意の早足で駆けた
こんなことするなんて、超面倒くさがり屋の俺ではありえない
でも、放っておけなかった
雨に打たれているこいつを見たら、なにかしなきゃって…
視界が開けてきて、森から抜けたようだ
この先まで行くと、人間に見つかるかもしれない
近くの木にゆっくりと女の子を下ろす
｢ん、んん｣
女の子が起きそうな雰囲気になったので、慌ててその場を去った
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作者名：ひな x他1人 | 作成日時：2018年5月1日 0時
