霞柱の許嫁が蝶屋敷の食事係の私だった件。【時透無一郎】

弐拾伍ノ話 ページ29

胡｢アオイ！解毒剤をもっと投与して！
なほ！清潔な布とお湯を…！｣



そこには忙しく動く姉さん達と、




顔も血だらけで横たわる




時透さんがいた。



天｢…しのぶ、姉さん…！

…と、時透さんは…！｣



胡｢…美月！
…正直言って危ない状態です…！

思ったよりも毒が回っている。


…それより美月、

包帯と薬を持ってきてくれますか?｣




天｢わ、分かった！｣


私は姉さんの言う通り包帯やお薬を取ってくる。



一刻も早く、


時透さんの元へ行きたかったけれど、




人手が足りていないのは目に見えていた。





何度か往復してお湯を持ってきた時には、


もう治療は終わっていた。






胡｢…なんとか一命は取り留めました。


………ですが、油断は許さない状態です。



美月、

私はお薬を調合してくるけれど、

何かあったら直ぐに呼んでね｣



そう言い、部屋を出ていった。





私はすぐに時透さんの元へ行くと、


ベッドにすがりついて泣いた。




天｢…っうぅ…！

…ぜったい、死なないで………！


時透さん…！｣






私が大粒の涙を流してうずくまっていると、


時透さんの手が私の右手をぎゅっと

握った。





無｢…何言ってるの、僕は、君をおいて死んだりしない。


…こんなことで、僕が死ぬと思うの？



ゲホッ…ゴホッ……ッ！｣




時透さんは激しく咳き込む。




天｢もう喋らなくていいです、

無理をしないで…？｣



時透さんは小さく頷くと、

再び目を閉じた。









聞きたかった、あの優しい声。



時透さんの手の温もり。

弐拾陸ノ話 #告白→←【番外編】#霞柱様とお料理してみた?!

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す