【文スト】うずまきの少女は接客上手

31.意地よ、いらっしゃいませ。 ページ34

敦は1人その場で倒れ込んだ雨芽の身体を抱き抱えていた

息はある

浅い呼吸を繰り返し、大きく開いた皮膚の裂け目から血が滲み出る



「雨芽ちゃんッッ!!!」



敦は雨芽を横抱きにすると、脚のみを虎化させて探偵社へ向かう筈だった

脚が虎化されないと気がつくその時までは

異能はその日の気候により変わったり、時によって変わるものもある

だが、敦の異能はそうではない

気候、時に縛られない筈だ。

敦は自分の手に違和感を抱え、視線をそっちにやる

右手は雨芽の細い首を支えており、左手は太もも辺りを支えている

その中の違和感とは、両手ともに虎化していることだ

雨芽の青白い細い首に爪が食い込み、太もも辺りを爪が中り傷だらけだった

上品なプリーツスカートが太もも辺りで裂けたせいか、直視することは出来ないが、敦は悟った



＿＿今直ぐ治療しないと雨芽は死ぬ


と。

敦は猛スピードで走る

虎化が腕のみしかしないのなら雨芽をおぶって、腕で走ればいいのだ

ポートマフィアビル前を横切ったところだった



「…っ！？雨芽！」

「！？！？」



重力使い 中原中也
と
黒き禍狗 芥川龍之介

が立っていた

芥川が敦を睨み、羅生門を伸ばす



「何するんだッ!?」



敦が叫ぶがそれを無視し、芥川は雨芽を1本の羅生門で包み込み残りの数本で傷口を止血した



「敦、手前……帰れ」



何かをいいかけた様だがすぐ様表情を変え帰れと言った



「嫌だっ！僕は帰らない!!」




敦はビルの前で声を荒らげた

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