３６１話 ページ18
｢ねえ、ゆづくんのその衣装、もしかして｣
いまだに照れてるのか、両手で顔をパタパタと仰ぐゆづくん。
リハーサルではゆづくんの演技を見れなかったから、今衣装を見て初めて何をやるのか分かった。
結弦｢うん。ロミオとジュリエットだよ｣
ゆづくんがエキシビションナンバーに選んだのは、2011-2012シーズンのフリーで演じたロミオとジュリエット。
私が初めてシニアの全日本選手権に出場して、ゆづくんとも初対面だった大会で演じたプログラム。
｢またあれが見れるの？｣
結弦｢うん。エキシビション用にちょっと短くしてるけどね｣
｢私、あの演技見てすごく感動したの……。またこうして近くて見れるなんて嬉しい｣
結弦｢ほんと？俺も思い入れのあるプログラムだから、そう言ってもらえて嬉しいよ。Aちゃんのは？今まで見たこと無いやつだったけど。初めてにしては結構滑り込んでる感じだったよね｣
｢私も2011-2012シーズンのプログラムだよ。エキシビションのやつ。全日本では違う曲をやったから、ゆづくんは見たことないと思う。本当は世界ジュニアでやる予定だったんだけどね。ほら、予想外の出来事があったから……｣
2年前、通り魔的な感じで知らない男の人に後ろから襲われたとき。
あれがなかったら、エキシビションで披露する予定だった。
｢せっかく作ったプログラムだから、いつかはお披露目したいなって思ってたの｣
結弦｢そっか。良かったね、今日見せることができて｣
｢うん。2年前の振り付けをそのまま持ってきたから、ちょっとジュニア感出てるかもしんないけど(笑)｣
結弦｢それはそれで面白そう(笑)｣
楽しもうねー、とゆづくんとグータッチをしたり、｢ゆづくん、金メダルだからアンコールでパリ散やるんでしょ？｣とヘランジのポーズを真似したり。
2人でテンション上げてたら、｢ねえねえ、｣と誰かに声をかけられた。
真央｢もうさ、真央じゃなくてゆづとAちゃんでオープニング出たら？笑｣
明子｢ほんと、仲いいよね。ゆづとAちゃん｣
｢わー！真央ちゃんごめん！ゆづくんと話してたら楽しくてつい(笑)｣
慌ててゆづくんの隣から退いて、どうぞどうぞ、と真央ちゃんに場所を譲る。
真央｢ゆづ、一緒に滑るのがAちゃんじゃなくてごめんね？｣
結弦｢いや、真央ちゃんと滑るの楽しみだから全然いいんだけど(笑)｣
私もバタバタと自分の場所に戻ると、ちょうどよくエキシビションの開幕アナウンスが流れた。
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作者名：優里奈 | 作成日時：2021年7月18日 15時
