氷上で煌めく太陽１９

８８５話《四大陸選手権2017　男子SP》 ページ4

トレーナーさんと体のメンテナンスを終えると、もう男子の最終組が始まるところ。
この組には結弦と昌磨くんがいる。
しっかり応援しようね、と言ってそれぞれの部屋に戻った。


現在のトップはネイサン。
100点を超える高得点だけど、結弦ならきっと上に立てる。

そう信じて最終グループの試合を見守る。


ジェイソン・ブラウンのあとに登場した結弦。
紫の衣装にオールバックのスタイルは相変わらず、


｢かっこいいなあ……｣


思わず声に出てしまうほどのかっこよさ。
今の私は、いち羽生結弦ファンだな。

なんて見惚れていると演技が始まって、最初に組み込んだ4回転ループ。


｢決まった！｣


しっかりと着氷して、きれいな流れで次に繋げた。

だけど次のコンビネーションで4回転サルコウが2回転になって、得点が伸ばせなかった。

後半のトリプルアクセルも完璧に決めたけど、4回転が一つ抜けたのとステップとスピンでレベル4が取れなかったところもあって100点には届かず。

演技後の結弦も、すごく悔しそうな顔をしてた。


ショートの最終結果は、ネイサン、昌磨くん、結弦の順番。
田中さんは11位で明後日のフリーに挑む。


試合が終わって、部屋で特にすることもなくてボーッと窓の外を眺める。
無数の街の明かりがキラキラと光っていて、ちょっとした夜景になってて綺麗かも。
雪が降って白くなってるから、そこが輝いて更に綺麗に見える。

そういや、北海道にいた頃はよく夜景を見に行ったりしてたなー、なんて懐かしい記憶を思い出した。

最近見てないな。
今シーズンが終わって家に帰れるときがあったら、お姉ちゃんとお父さんを誘ってみようか。

そんなことを考えていると、静かな部屋にスマホが振動する音が響く。
硬いものの上に置いていたから、結構派手にブーブー鳴ってびっくりした。


｢……は？｣


画面を見て、予想外の相手と内容に頭が混乱した。


『Aちゃんやっほー。あなたのお姉さんの由香里だよ！試合見てるよー。羽生くん3位だったね！昌磨くんが2位で、私嬉しくて泣いちゃった！』


｢なんであいつが私のアドレス知ってるの……｣


それは昨年末、初対面なのにズカズカとパーソナルスペースに踏み込んできた非常識な義姉だった。


『それと、Aちゃんのアドレスは伊吹くんのスマホから勝手に拝借しちゃった♡』


｢嫁がバカなら旦那もバカかよ……。もー！｣


明日の試合に影響したら兄夫婦のせいにしてやる。

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