907話 ページ26
お風呂を済ませて着替えて、寒くないようにダウンコートを着て結弦からもらったアイリンの手袋をして外に出る。
吐く息の白さを見て3月はまだまだ寒いなーなんて思いながら、最初の大通りの角を曲がったベーカリーの明かりに目をやる。
そこには大好きな人の後ろ姿。
「結弦!」
私の声に振り向いた結弦は、目を細めて笑いながら「おつかれ」と私に近づいてくる。
結弦「A風呂上がりなんでしょ?湯冷めしない?大丈夫?」
「大丈夫だよ。だいぶ時間経ってるし、帽子被ってきたから。それにアイリン手袋も!」
ほら!と両手を見せると、結弦は嬉しそうに笑う。
なんかいいな。こういうほっこりするやりとり。
「へへ……」
結弦「なに?どした?」
「いや、幸せだなあって思って」
緩む顔を抑えきれず、ニヤニヤしたまま結弦に言う。
すると結弦はあはは、と笑って、
結弦「俺も。こういうなんてことない時間が幸せだなーって思った」
「大事な試合前なのに、こんなに緩んじゃっていいのかな」
結弦「今だけはいいの。こういうのはメリハリが大事なんだから。明日からまたスケートに集中すればいいよ」
ね?と微笑みながら、結弦が私の手をとる。
手袋越しに感じる結弦の手の感触は、やっぱり大きくて男の人だなって感じさせる。
「ねえ、結弦は手袋してないけど寒くないの?手、冷たいんじゃない?」
結弦「ん?俺?いいの。寒くなったらこうすればいいから」
「え?……ひゃっ!」
突然ほっぺたに冷たさを感じる。
結弦の冷えた手が、私のほっぺたを包み込んでいた。
結弦「わ、Aあったけー」
「ねえ、温かいかもしんないけど、こうしてたらいつまでたっても結弦の家に着かないよ?」
結弦「あ、そっか。じゃあ最後に、」
ほっぺたを包み込んだままクイッ、と顔を少し持ち上げられて、結弦の顔が近づいてきたと思ったら冷たい唇がそっと重なった。
「ん……」
結弦「そんな色っぽい声出さないでよ。やめらんなくなる」
「え!ここで?!」
結弦「冗談だって(笑)ほら行こ」
「結弦が言うと冗談に聞こえないって……」
結弦「なんか言った?」
「いーや?結弦のお母さんのご飯楽しみだなーって」
今日は鍋だってよ、という結弦と、再び手を繋いで結弦の家に向かう。
ただ手を繋いでることも、他愛ないやりとりも幸せで。
いつもは骨身を削ってスケートに生きてる私達だけど、今だけはただの19歳と22歳の恋人同士でいてもいいよね?
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あやめ(プロフ) - はい!毎回楽しみに待っています。(^O^) (2022年8月27日 11時) (レス) id: 418efe221e (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - あやめさん» いえいえ(^ ^)初めてだと分からない時ありますよね(^-^)お名前はちゃんと表示されてて分かりますよ〜(^^)お話はまだまだ続くのでこれからもよろしくお願いします😊 (2022年8月27日 10時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - そもそも占いツクールでこうやってコメントのお話するのが優里奈さんで初めてだったもので、、、うまく伝えられなくてすみません (2022年8月27日 9時) (レス) id: 418efe221e (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - ああ、勘違いさせてしまってすみません。左上に名前が表示されているのでわかるものなの?っていう確認をしたかっただけです。 (2022年8月27日 9時) (レス) id: 418efe221e (このIDを非表示/違反報告)
優里奈(プロフ) - あやめさん» あっ、そうなんですね( ˊᵕˋ ;)名乗らなくても分かるかな?という事だったので前にお話した事あったのかも、と思ってました💦いつも読んでくださってありがとうございます!こういうコメントを頂けると頑張れます💪 (2022年8月27日 7時) (レス) id: 59b863f10c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優里奈 | 作成日時:2022年8月12日 10時