氷上で煌めく太陽１９

９０６話【結弦side】 ページ25

練習が終わって着替えを済ませる。

世界選手権が近づいててピリピリしてるからか、ここ数日は練習以外でAとゆっくり会えてないなーなんて思いながら、荷物を持ってロッカールームを出た。


デートはシーズンオフまで無理だとして、一緒にご飯食べるくらいはできんじゃね？

そんなことを考えながらロビーへ向かう通路を歩いていると、壁により掛かるAが見えた。
スマホいじってんのかな？
なんか難しい顔してる。どうしたんだろ。

スマホをしまった後も険しい顔をしていて、なんかあったのかなー？とAに近づいてみた。


俺の呼びかけに気づいたAは、顔をあげるとニコッと笑ってくれて。
さっきの険しい顔はどこへやら。


結弦｢ね、A。今日の夜うちで一緒にご飯食べない？｣

｢え。結弦の家で？｣

結弦｢うん。最近ゆっくり会えてないなーって思って｣

｢そりゃあ、世界選手権が近いからね。スケートに集中したいし｣

結弦｢そうだけど。デートは無理でも、うちで一緒にご飯食べるくらいはいいんじゃない？｣


ね、いいでしょ？とちょっと可愛くおねだりしてみる。


｢……いいよ。じゃあ一旦家帰って、お風呂入ったら行く｣


Aが俺のお願いに弱いのはすでに分かってたけど、思ったよりすんなりオッケーしてくれた。
もしかしたら大会が近いからって断られるかと思ってたけど。


｢結弦にね、聞いてほしいことがあるんだ｣

結弦｢聞いてほしいこと？なに？｣

｢私の大嫌いなヤツのこと｣

結弦｢……あー、｣


Aがここまでハッキリ嫌いという人は一人しかいない。
ってことはまたなんかあったのかな？


｢結弦には関係のないことだから話そうか迷ったんだけど……どうしても一人じゃ消化しきれなさそうで｣


誘ってくれてちょうどよかった、と少しホッとしたように笑うA。
Aは溜め込む癖があるけど、こうして自分から俺を頼ろうとしてくれたのは嬉しい。


結弦｢関係ないとか迷惑かもとか気にしないで。いつでも言ってよ｣

｢ありがと｣


じゃあまたあとでね、と先に帰るAを見送って、母さんにAを晩ごはんに誘ったことを電話で伝えた。

母さんは｢Aちゃんが来るの久しぶりね｣って、電話越しでも分かるくらい急にウキウキし始めた。

だよな。
俺と二人で食べるより、娘みたいに可愛がってるAがいたほうが嬉しいよな。
俺だってAがいるってだけで嬉しいもん。


親子揃ってAのこと大好きかよ(笑)

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