36話《2012年フィンランディア杯》 ページ38
2012年10月。
シーズンが本格的に始まる時期だ。
私はまず、調整も兼ねてフィンランドで行われるフィンランディア杯に出場することになった。
シニアに転向して初めての大会が国際大会。
それなりに緊張というものもあるけれど、楽しみのほうが大きいかもしれない。
学校では壮行会も開いてくれて、ちょっと気恥ずかしい思いをしながらもみんなに頑張れって送り出してもらった。
そしてたどり着いたフィンランド・エスポー。
「さっむ……」
コーチ「そりゃあねぇ。北海道より北にあるんだもの」
分かってるつもりだったけど。
風が吹いてるから余計に寒く感じるんだ。
それにうまくいえないけど、北海道とはまた違った寒さだなー。
北欧舐めてたかも……。
ほら行くよ!というコーチの声に、ガラガラをキャリーを引いて後をついていった。
ーーーーーーーーーー
「ここに泊まるの?」
コーチ「そうだよー。大抵の出場者はここに集まってる。チェックインしてくるからここで待ってて」
「はーい」
コーチがフロントに行ってる間、座るのもなんだか落ち着かなくてロビーをうろうろ。
観葉植物を眺めてみたり、壁にかけられた絵画っぽいものを見てみたり。
上を向いたら大きなシャンデリアがあって、一気に別世界に来た気分になった。
??「加賀美さん!」
不意に名前を呼ばれて、こんな異国の地で、しかも日本語で話しかけてくるなんて誰!?と勢いよく振り返ると……
「……あ!」
結弦「やっほー」
そこにはニコニコしながら手を振る羽生くんがいた。
そういえば、コーチが「羽生結弦も出るみたいだよ」って言ってたような……
羽生くんはキャリーを引きながら私のところまでやってきて、「はー、疲れたー」なんてフニャフニャした笑顔でキャリーに体重を預けた。
結弦「久しぶりだね。全日本以来?」
「そうですね」
結弦「今回、加賀美さんが出るって聞いてさ。楽しみにしてたんだ〜」
「そう、なんですか?」
結弦「またこの目で加賀美さんの演技が見たいなって思ってて。今年シニアに転向するって言ってたし、早くて全日本かなーって思ってたらこんなところで会えちゃった」
そう言って嬉しそうに笑う羽生くんの笑顔は、本当に男の子か?と疑いたくなるくらい可愛い。
そのへんの女の子より可愛い。
高校3年生の男子って、こんなに可愛いんだっけ?
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作者名:優里奈 | 作成日時:2021年4月13日 22時