【江戸川乱歩】何故か事務員の私が名探偵様に揶揄されている

厭な予感 ページ3

*


「それにしても、君は実に揶揄い易い(単純だ)。」


事件現場に向かう途中、乱歩さんが云った。私は思わず頬を膨らませた。


「莫迦にしてるんですか。そりゃあ、乱歩さんに比べたら莫迦ですけど......」


だが、逆に言えば、乱歩さんに叶う人はいない、と私は思う。こんなに頭の良い人はそうそういないだろう。いてたまるか。


「其れはさて置き、今回はどの様な事件なのですか？」


「んーとねー、確か異能力を使ったとみられる事件だったかな？ あ、そうだ！ いい事考えたよ！」


乱歩さんはポンッと手を打ち、云った。......うっ、厭な予感がする。乱歩さんにとっていい事＝私にとって悪い事っていう公式が、私の中では成り立っているのだ。


「僕とAで推理勝負しよう！」


「い・や・で・す！！」


私はキッパリと言い放つ。だって、負けるの確定じゃないか！！


「異能力とみられる殺人なのでしょう？ 異能力者でもない私には難しいですし！」


ま、まぁ、乱歩さんも異能力者ではないが......ほぼ異能力者みたいな物だろう。


「あれ、異能力者じゃないの？」


「何言ってるんですか。違いますよ。異能力者だったら、事務員(乱歩さんのお世話係)なんてやってませんよ！」


乱歩さんは、「ふーん」と意味有りげに笑った。......何なの。その笑みは。


「まぁ、推理力勝負はやろう！ 負けた方は勝った方の、何でも言う事を聞く！！」


「えぇー厭ですよ！！」


「僕がやると言ったら、やる！！！ さぁ、行くよ、A！」


なんと強引な探偵......

勘違い→←揶揄い上手

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