桜が降る夜は３ (ページ29)

今日:4 hit、昨日:179 hit、合計:177,378 hit

#129 ページ29

.

私を引きずるようにしてどんどん歩いていく樹。

未だに卒業式の熱が冷めず騒がしい校庭を気にせず通り抜け、駐輪場に止めてある樹の自転車の後ろに乗せられた。

…樹の後ろに乗るの久しぶりだ。なんか、嬉しい。

「ちゃんと掴まってて。」

「え、あ、うん」

乗せられたまま頬が緩まないように頑張っていたら、もう学校を出られるのか、樹が私の腕を自分の体に巻き付けるようにした。

一気に近くなる距離。

見えないからいいや、と赤くなった頬を隠すようなことはしなかった。

グッとペダルを踏み込んだ樹は、そのままどんどん漕いで三年間お世話になった学校を出て、私達の家の方向へ走り出す。

このまま家に帰るのかな。それとも、どこかに行くの？

何もわからないまま、体を寄っかかるように樹に預けて、まだ冷たい春の風に当たった。

.