はなことば -2-【短編集】

遠くへ行ってしまったハマユウ ページ8

ミキ 亜生


side亜生


亜生「…A」

昂生「なんでAがこんな目にあわなアカンのや!」

亜「兄ちゃん落ち着いて!」

昂「落ち着けるか!なんでお前はそんな冷静でいられるんや!」

M-1から1週間後、Aが亡くなったという知らせが入った。

その知らせを受け、俺達と同期は病院に駆けつけていた。

亜「…A、ずっと笑ってたんや。弱々しい姿、1回も…っ」

昂「泣くな亜生…。俺だって泣きたいし、ここにおる皆も同じ気持ちや」

兄ちゃんは涙を溜めていたのに、泣かないよう堪えていて、それが俺をさらに辛くさせた。

亜「俺の話、たくさん聞いてくれたのに…」

昂「亜生…」

亜「Aの見舞いにもほぼ毎日行ってたのに…。好きやったのに、なんで…」

NSCの時からずっと好きだった。

共演する度に目で追いかけていた。

想いを伝える前に、彼女は遠いところへ行ってしまった。

昂「亜生、これお前に」

亜「…え?」

昂「…手紙。Aの担当医から渡されたんや」

兄ちゃんから渡された手紙の封を切り、中身を確認する。

亜「A…っ、遅いかもしれへんけど、俺も…好きだった…っ」

「亜生が好きです」と書かれた文字が涙で滲んだ。

涙と泣き声で溢れる病室の中で、1輪のハマユウだけが霞んだ視界の中で揺れていた。



ハマユウの花言葉「どこか遠くへ」

「汚れがない」

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