はなことば -2-【短編集】

恋に悶えるアンスリウム ページ39

パンサー 向井慧


side向井


「…さん、向井さん、向井さん!」

向井「…!あ…ごめん、Aちゃん」

「最近なにかありましたか?」

菅さんと尾形さんも心配してましたよ、と優しく笑うAちゃん。

事の発端は、数日前のあの日だった。

──「人懐っこい笑顔を見せるの、今日みたいな日だけにしてください」

打ち合わせ中に彼女が言った言葉。

それ以来、目が合えばドキドキして上手く話せなかったり、手を振ってくれるだけで嬉しくなったり。

向(変に意識しちゃうんだよな…)

菅「向井、Aさんと打ち合わせした次の日からずっとあんな感じです」

「ほぉ〜」

菅「いや、ほぉ〜って納得しないでください」

「あの調子で大丈夫だったんですか?」

大丈夫なわけがない。今だって、菅さんと話している彼女に密かに嫉妬してるし…。

あれ、俺もしかして…。

向「恋、してんじゃん…」

2人「「へ?」」

尾形「おーい!スタッフさん捜して…向井、熱か?」

菅「尾形はちょっと黙ってて」

Aちゃんが、俺の顔をじっとのぞき込む。

吸い込まれそうなくらい綺麗な黒い瞳は、俺をとらえて離さなかった。

「恋してますね」

向(誰のせいでこうなってるかわかってんの?)

俺の恋心は、胸の奥で悶々としていて。

アンスリウムが焦れったさに耐えきれなかったのか、静かに揺れ始めた。



アンスリウムの花言葉「煩悩」

「恋に悶える心」

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