はなことば -2-【短編集】

赤きシクラメンの嫉妬(ﾘｸ) ページ33

かまいたち 濱家隆一


side濱家


「え、山内さん最新刊買ったんですか!?」

山内「もう発売日当日にな!俺が行った時もう残り少なくなってて…」

「マジですか…」

俺を差し置いて山内と楽しそうに話すA。

そりゃ彼氏だし、彼女が他の男と話しているのを見るのは面白くない。

濱家「山内」

山「なんや濱くん」

濱「マネージャーが捜してたで。1階にいるから早く行った方がええよ」

山「ホンマに?行ってくるわ」

山内を楽屋から退出させ、Aの顔色をうかがう。

生憎、俺の意思には気づいていないようだ。

濱「A」

「はい…」

濱「その…山内と話しすぎや」

「ごめんなさい…?」

濱「あー…」

こういう時、なんて言ったらええんやろ…。

「隆一さん」

濱「なんや急に」

「意外と嫉妬深いんですね」

濱「誰のせいやと…」

「っわ、ちょっとなに…!?」

彼女を壁際に追い詰め、首筋に顔を埋める。

それだけじゃ足りなくて、唇を重ねて口内を貪った。

「…っ、はぁ…」

濱「…これから本番やし、これくらいにしとくわ」

「これくらい…って隆一さん、なにしてるんですか!」

濱「なにが?」

彼女の言いたいことはわかる。けど、それくらい俺が嫉妬深い証拠だ。

「目立つじゃないですか!」

濱「口で言わないとわからん」

「キ…キス、マーク…」

濱「ええやん、見せつければ」

「…………!」

顔を真っ赤にして楽屋を出ていくA。

「嫉妬した」と素直に言えたら、とシクラメンに本音を零した。



赤いシクラメンの花言葉「嫉妬」

ホトトギスが秘めた意思→←孤独なエリカ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す