はなことば -2-【短編集】

心揺れるホテイアオイ ページ28

千鳥 大悟


「ただい…なんでいるの?」

大悟「おったらアカンか?」

家に帰ると、幼馴染みの大悟がソファに座ってTVを見ていた。

お互いの家には頻繁に出入りする仲だったのだが、今回ばかりは気にした。

彼は芸人、私は社会人。共に家を出たり、なにか行動を起こせばカメラに撮られる危険がある。

…そんな私の不安に、彼は気づいてないようだが。

「大悟、仕事は?」

大「終わった。Aの家がスタジオから近くて助かるわ」

「それは良かった」

大「なぁA、タバコ吸うていい?」

「いいけど…」

大「…A」

「はい」

タバコの煙を吐き出すと、なにかを決心したかのように真剣な顔になる大悟。

大「俺はAとなら、話題になってもええよ」

「…は?」

大「ワシが芸人目指す、って言うた時に不安そうな顔してたのも知ってる」

「うん…」

大「週刊誌に載る度にイタ電してきたのも、俺と会った時に周りを警戒していたのも…」

──「俺のこと、心配してたんやろ?」

彼のその声が、私の鼓膜を震わせた。

何故か、一気に不安が消えていった気がした。

大「Aは昔から変わらんのう」

「大悟も相変わらず豪快だね」

この先も、変わらぬ「幼馴染み」で居続けるのだろうか。

心のどこかで「幼馴染み以上」を望む私の気持ちと、ホテイアオイの花が揺らいでいた。



ホテイアオイの花言葉「揺れる心」

「恋の悲しみ」

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