はなことば -2-【短編集】

罪作りなユウガオ ページ23

NON STYLE 石田明


久しぶりに帰ってきた大阪は、夏を迎えていた。

あの時別れたのは冬だったのに、季節の移ろいはあっという間だと感じる。

「石田くんありがとな。仕事中なのに駅まで迎え来てくれて」

石田「ええって。打ち合わせは終わったし」

「ホンマに?」

石「終わってる終わってる、だから早くスタジオ行こ」

留学先の話や石田くん達の話、同期達の活躍の話など、話題は尽きなかった。

同期や相方の井上くんの話をする時の彼は、イキイキしていて楽しそうだった。

「皆からのLINEが嬉しかったわ」

石「ホンマに?」

「ホンマに。寂しかったもん」

留学先では、石田くん達からたくさんのメッセージを貰った。

「応援してる」「諦めるな」といった励ましの言葉や、「泣いてそうだからやる」といった写真つきメッセージまで。

「石田くんも元気そうでなにより」

石「Aもな」

「ありがと…あ、夏祭り?」

辺りは夏祭りの準備で賑わっていて、道中にはアサガオやユウガオの鉢植えが並んでいた。

石「そうなんよ、Aも行くやろ?」

「なにが?」

石「夏祭りや!その日皆オフだし、井上が奢ってくれるって」

「井上くんの奢りなの?やったね」

石「奢ってもらおうな〜」

石田くんの笑顔は罪だ。

───私の心を、いとも簡単に奪っていくから。

ユウガオの花が、夏の風に揺られていた。



ユウガオの花言葉「夜」「儚い恋」「罪」

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